■見ただけで呪われる?!ガチっぽさが怖い『作業服の男』

 最後は、見たら呪われる系のクラシック映像『作業服の男』を振り返りたい。収録は2巻で、まだ中村監督がナレーションを担当していないため「おわかりいただけただろうか」は登場しないが、名物の“警告”が初めて使用された作品である。

 事の始まりは、一通の手紙だった。そこには、「見た人全員が危険な目に遭うビデオがあり、彼氏がこれを見た後に失踪した。映っているのは自分(投稿主)だが自分は見ていない」といった旨が書かれていた。

 スタッフが投稿主に話を聞くと、ビデオは旅行中の電車内で彼氏が撮ったものだという。さらに調べを進めるべく、スタッフは彼氏の弟を取材した。

 同作収録の後編では、弟と友人も映像を見た後に交通事故で意識不明になったり高熱が出たりしていたことが判明。さらには、ダビングした人にも災いが降りかかっていた。まさに呪いのビデオである。

 終盤、「この後の映像を見るかはあなたの自由です」という、何かあっても自己責任でと言っているかのような警告文が差し込まれついに映像が流れる。

 中身は、車内で投稿主の女性を映していると、窓にこちらを見つめる坊主頭&作業着の男が反射しているというもの。実際には反対側の席に人はいなかったという。

 そして物語は、『Special1』に続く。前作以降、スタッフは映像を見て災いが起こったというクレーム処理に追われていた。さらに、坊主の男性が何か話していると訴える視聴者も続出する。

 そこで映像を徹底検証し、番組は男性が鉄道の落石事故で死んだ作業員ではないかと突き止めた。映像の中で彼は確かに何か言っており、呻き声のようなものも聞こえた……気がする。事故を隠蔽された恨みで、ずっと留まり続けているのだろうか。

 映像は怖くないものの、「見たら災いが起こる」という巻き込み方がゾクゾク感を煽る『作業着の男』。お祓い済みではあるが、この映像はSpecial版でもその後の劇場版でも流れるので怖い人は要注意だ。

 このほかにも、『ほん呪』は背筋の凍る良作ばかり。じわじわとこみ上げてくるモキュメンタリーホラー特有の恐ろしさは一度見たらクセになること請け合いだ。

 なお、2012年にモキュメンタリーの手法を取り入れたホラー小説『残穢』を書いた小野不由美氏は、全作視聴するほどのシリーズのファンで、作品への影響を受け執筆したことを公言。また、前述した『近畿地方のある場所について』の背筋氏は、この『残穢』の影響を受けたことをインタビューで語っている。1999年からスタートした恐怖の波が、じわじわと伝染を続けているのだ。

 ホラーブームのこの夏、恐怖の疑似体験をしてみたい人はぜひ『ほん呪』の傑作をチェックしてみてほしい。

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