モキュメンタリーホラーの先駆け『ほんとにあった!呪いのビデオ』が描いた「生々しい恐怖」と「伝説回」の画像
8月に発売となる最新作『ほんとにあった!呪いのビデオ 112』(日本スカイウェイ)

 近年、フィクションにドキュメンタリーの手法を盛り込んだ「モキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)」と呼ばれるジャンルがホラーを中心に流行している。現実と錯覚しそうなほどリアルな恐怖を演出するホラーが、YouTube『フェイクドキュメンタリーQ』や背筋氏の小説『近畿地方のある場所について』などのヒットを機に大注目を集めているのだ。

 これは1999年の映画『ブレアウィッチ・プロジェクト』で一躍有名になったジャンルだが、実は同年に国内でもモキュメンタリーホラーの傑作が誕生していた。

 それが、中村義洋監督による「おわかりいただけただろうか」のナレーションでお馴染みの『ほんとにあった!呪いのビデオ』シリーズだ。

 その歴史は長く、1999年8月に初巻が発売されて以降、今なお続く人気作であり、2025年8月には最新作『ほんとにあった!呪いのビデオ112』も発売される。今回は、そんな『ほん呪』の鳥肌エピソードを見ていこう。

※本記事は各作品の内容を含みます。

■部屋に佇む異形のモノに鳥肌が止まらない!『不気味な女』

 本シリーズは一般視聴者から送られた「心霊現象」をおさめた映像をスタッフが検証するという形をとったモキュメンタリー作品。だが、本当の心霊現象ではないかと見紛うようなリアルなものばかりで、怖さレベルはいずれも破格。初めてシリーズを見る人は、本編開始前に流れる「本作では画面にノイズや異音が入る場合がありますがビデオテープの異常ではありません」といった注意書きの文言からして震え上がってしまうだろう。

 一度見たら忘れられない衝撃映像といえば、25巻収録の『不気味な女』だ。テレビの心霊番組でもたびたび取り上げられており、シリーズ中でも知名度が高い最恐の一作である。

 「橋詰陽子」なる女性が投稿したビデオは、投稿主の女性が母に送るために携帯電話で新居の様子を撮影したものだ。粗い画質の自撮りとともに、実況しながら次々と室内を撮影していく投稿主。「それでは、問題の映像をご覧いただこう」というナレーションの後、カメラで撮られたクローゼットの扉の隙間に、子どもの様な顔が映り込む。

 投稿主は一瞬固まるもクローゼットを確認しにいき、気を取り直して撮影を再開。改めて実況しながらカメラを窓方向に回すと、黒い服を着た女が立っていた。

 瞬間、携帯を投げ捨てて部屋を飛び出す投稿主。部屋に残された真っ暗な携帯画面からは、子どもと動物のようなくぐもった呻き声が鳴り響く。

 本作の恐怖ポイントは、何と言っても正気のない顔で佇む女の不気味さだ。携帯電話ならではの画質の悪さ、小ささも相まってとんでもなく恐ろしい。さらに、投稿主が声も上げずに逃げ出すところも非常にリアルなのだ。

 その後、投稿主が友人に見てもらったところ部屋に異常はなく、不動産会社に聞いても事故物件ではないとのこと。だが、番組スタッフが調査すると、天井裏から皮脂と血液のついたロープが見つかる。管理人いわく、その部屋には30代の女性が住んでいて子どもの泣き声が聞こえていたそうだ。血の付いたロープ、子どもと女性……きな臭さを残したまま映像は終わる。

 30巻には後日談(前後編)が収録された。投稿主は別の女性で、『不気味な女』鑑賞中に例の女が映り込み、友人が不調をきたしたという。確かに映像を見ると、鑑賞中に友人の後ろに女が現れ、あの呻き声が部屋に響き渡っている。

 後日、スタッフの元に友人から連絡が入る。彼女は、堕胎経験のある自分が女とシンパシーを感じてしまったのではないかと考えていた。実際、供養後は出てこなくなったそうだ。

 怪現象の勃発から解決までを描いた『不気味な女』。後日談は怖くないが、映像のインパクトは今見ても強烈だ。

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