■第3作『スラムダンク 湘北最大の危機!燃えろ桜木花道』未知の強豪・緑風と激突
1995年3月公開の劇場版第3作『スラムダンク 湘北最大の危機!燃えろ桜木花道』は、インターハイ神奈川県予選・海南戦敗北後のエピソードである。そう、桜木が責任を感じて坊主頭になる、あの印象的な場面から本作は始まる。
次戦・武里戦、そして運命の陵南戦を控えるなか、湘北が練習試合の相手に選んだのは、新設ながらも全国から実力者を集めた未知の強豪・緑風高校だった。
主将・マイケル沖田はアメリカ帰りで、NBAからも注目される逸材。さらには、そのマイケルにアリウープでパスを供給する副主将でセンターの名高光や、三井寿の武石中時代の後輩・3Pシューター克美一郎、そして双子のGコンビ・鶴見精二&啓二など、個性的な選手たちが顔を揃える。
一方、湘北は海南戦のケガでベンチスタートとなった赤木に代わり、木暮公延がスタメン出場。献身的なプレイで、湘北に再び闘志を呼び起こすシーンは必見だ。そして、桜木は試合終盤で再び海南戦での痛恨のパスミスと同じ状況に直面してしまう……。
漫画では描かれなかった木暮の奮闘と桜木の再起、本作は名シーンの数々が詰まっている。
■第4作『スラムダンク 吠えろバスケットマン魂!!花道と流川の熱き夏』流川の知られざる物語
1995年7月公開の劇場版第4作『スラムダンク 吠えろバスケットマン魂!!花道と流川の熱き夏』は、それまでの劇場版と趣を変え、試合そのものよりも「流川楓」を中心とした人間ドラマが描かれることになった。
物語の鍵を握るのは、流川の母校・富ヶ丘中の後輩、水沢イチロー。「流川先輩と全国制覇する」という夢を抱き湘北進学を目指していた水沢だったが、右膝に関節結核を患い、選手生命の危機に直面していた。
そんな水沢に共鳴したのが、自らも海南戦でケガを負った赤木だ。安西先生に直談判し、全国大会を目前に控える大事な局面であったが、水沢の“一日限定”での練習参加が認められるのである。
紅白戦では、流川があえて別チームを希望し、全力で水沢に立ちはだかる。途中、右膝の激痛に倒れ込む水沢に「甘ったれんな! 試合はまだ終わってねえ 思い残すことがなくなるまでやるんだ!」と叱咤。それは不器用な流川の紛れもないエールであり、原作ではほとんど描かれなかった先輩としての流川の姿だった。
受け継がれるバスケへの情熱が丁寧に描かれた本作は、劇場版シリーズのなかでもひときわ異彩を放つエピソードである。
『スラムダンク』劇場版4作品は、原作では描かれなかった練習試合や空白期間を補完し、キャラクターの内面や成長をより深く掘り下げた点が最大の魅力だ。
アニメオリジナルのライバルたちとの対決を通じて、桜木や流川の知られざる一面が浮かび上がり、原作ファンにとっても「もうひとつのスラムダンク」として楽しめる内容となっている。
「原作しか読んでいない」という人こそ、ぜひ一度目にしてほしい。