
昭和のロボットアニメといえば正義のために主人公が戦い、最後は諸悪の根源を打倒して平和をもたらし、ハッピーエンドを迎えるのが定番だった。
だが思い返してみると、ときには最終回がスッキリしないものもあり、それどころか主人公側が露骨に“ヒドい目”に遭っているケースも見受けられる。
たとえば『機動戦士ガンダム』の最終回では、ア・バオア・クー要塞でシャアと死闘を繰り広げたアムロは、奇跡的な生還を遂げていた。しかし続編の『機動戦士Zガンダム』では、主人公のカミーユ・ビダンがパプテマス・シロッコに勝利しながらも、最後は精神疾患を発症するという後味の悪さが残る結末が描かれた。
このような後味の悪さを残すロボットアニメの最終回は、なぜか印象に残りやすい。そこで今回は筆者が個人的に忘れられない、主人公陣営がヒドい目に遭った昭和のロボットアニメを振り返ってみたい。
※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。
■頼もしかった主役機が見るも無惨な姿に……
日本初の「巨大ロボット」アニメは横山光輝氏が原作の『鉄人28号』(1963年から放送)だが、日本初のパイロットが搭乗するロボットアニメは、永井豪氏原作の『マジンガーZ』(1972年から放送)だ。
世界征服を企むDr.ヘル率いる機械獣軍団と戦うため、高校生の兜甲児が光子力で動く巨大ロボット「マジンガーZ」に搭乗して戦う物語。正統派ヒーローの甲児が小型戦闘機「ホバーパイルダー」でマジンガーZの頭部にドッキングするアイデアは当時の子どもたちを魅了した。
対する敵陣営も個性派ぞろい。右半身が女性で左半身が男性という「あしゅら男爵」、自身の首を小脇に抱えている「ブロッケン伯爵」、虎の腰から上に人間の上半身を乗せたサイボーグ「ゴーゴン大公」など、斬新なビジュアルの敵が多数登場する。
機械獣たちと過酷な戦いを続けてきた甲児は、第91話「ラストチャンス!! Dr.ヘル死の決戦!!」で、ついに宿敵のDr.ヘルを討ち倒す。
ところが『マジンガーZ』の最終話(第92話)「デスマッチ!! 甦れ我等のマジンガーZ」では、生き延びたゴーゴン大公が古巣のミケーネ帝国に戻り、光子力研究所への攻撃を進言。このとき勝利の余韻に浸っていた光子力研究所は完全に油断しており、傷ついたマシンの修理も終わっていなかった。
ミケーネの支配者「闇の帝王」の命を受け、暗黒大将軍は2体の戦闘獣を派遣。弓さやかのダイアナンAとボスのボスボロットが窮地に立たされると、包帯だらけの痛々しい姿の甲児がマジンガーZで出撃した。
しかし、マジンガーZの代名詞であるロケットパンチは破壊され、ミサイルも戦闘獣に溶かさせてしまう。空を飛ぶためのスクランダー(翼)も折れ、数々の機械獣を倒してきた「光子力ビーム」も通用しない。そして戦闘獣が放ったドリルが、マジンガーZの腹部を貫いたときの悲惨な絵面は、あまりにも衝撃的だった。
そんな絶体絶命の危機に現れたのが、剣鉄也が搭乗する「グレートマジンガー」である。マジンガーZに似たフォルムながら、圧倒的な強さで戦闘獣を撃破。そのグレートマジンガーの力強さに、幼い筆者は当時ポカーンとしたものだ。
実は絶大な人気を誇る『マジンガーZ』の後番組として、『グレートマジンガー』(1974年から放送)が翌週から放送開始。甲児たちをフルボッコにした暗黒大将軍は鉄也が戦う敵となる。つまり『マジンガーZ』の最終回は、新番組のキャラやロボの顔見せと主役交代を兼ねていたのだ。
とはいえ、これまで応援してきた主人公機がズタボロにされ、咬ませ犬のような扱いを受ける展開は残酷で、かなりショックな最終回だった。