『ジークアクス』でも聞いた？キケロガ、ハクジ…初代ガンダム「トミノメモ」に書かれた「幻の機体」たち

　現在放送中の『ガンダム』シリーズのテレビアニメ最新作『機動戦士ＧｕｎｄａｍＧＱｕｕｕｕｕｕＸ（ジークアクス）』（日本テレビ系）。同作には、これまでのガンダム作品に登場した懐かしの機体が多数登場し、大きな話題を呼んでいる。

　初代『機動戦士ガンダム』に登場したモビルアーマー（ＭＡ）「ブラウ・ブロ」によく似た機体が「キケロガ」という名前になっていたり、白兵戦用モビルスーツ（ＭＳ）「ギャン」の新規武装に「ハクジ」と命名されていたりと、一見不思議に感じる部分もある。

　しかし、初代『ガンダム』をよく知るファンなら、これらの名前を聞いてピンときた人もいるはず。

　実は「キケロガ」や「ハクジ」といった名称は、『機動戦士ガンダム』の監督である富野由悠季氏が、初代『ガンダム』の初期プロットとして作成した、通称「トミノメモ」に出てくる機体名と一致するのだ。

　そこで今回は、書籍『機動戦士ガンダム記録全集５』（日本サンライズ）に収録された「トミノメモ」に登場する幻の機体たちを紹介していきたい。

■エグザべ少尉が乗るギャンの武装名の元ネタ？

　富野由悠季氏による「トミノメモ」は、『ガンダム』の全５２話分のシノプシス（あらすじ）である。しかしテレビアニメ『機動戦士ガンダム』は諸事情により４３話に短縮されたため、実際に放送されたエピソードとトミノメモに書かれた内容は異なる。

　トミノメモに出てくる「ハクジ」は、マ・クベが特注した「剣技モビルスーツ」と書かれている。その特徴から、アニメ『ガンダム』でギャンに相当する機体は、当初「ハクジ」という名称で考えられていたことが分かる。

　ちなみにトミノメモには「ギャン」という機体名も登場しており、こちらはシャアが搭乗する重火砲タイプのモビルスーツの名称と書かれていた。つまり、アニメ本編での「ゲルググ」が、トミノメモの段階ではギャンという名前だったようだ。

　トミノメモによれば、マ・クベはハクジに乗り、テキサスコロニーにて「アムロ・レイ」のガンダムと剣技で対決を挑む。しかしマ・クベはシャアの罠とガンダムの攻撃で撃破されると書かれており、アニメと同じ結末になっていた。

　ハクジという機体名がアニメ放映時にギャンに変わった経緯は不明だが、白磁のツボをこよなく愛するマ・クベにピッタリの名前ともいえる。

　そして『ジークアクス』では「ハクジ」の名は、ギャンが持つ特殊武装の名称になっていた。そのハクジを手にしたギャンが、巨大モビルアーマー「ビグ・ザム」を討ち取る大金星をあげていたのは胸熱だ。

　『ジークアクス』にて、シャリア・ブルの愛機として活躍する「キケロガ」。見た目は初代『ガンダム』でシャリアが乗っていたＭＡ「ブラウ・ブロ」にそっくりだが、可変機構が追加されたり、サイズが違ったりと、細部の設定が異なっている。

　しかし、もともと「キケロガ」はトミノメモに登場した機体名で、「シャアの搭乗機」と書かれている。ビジュアルなどの具体的な設定はなく、「本編に登場せず、ブラウ・ブロ的メカ」という注釈があるのみだった。

　『ジークアクス』でブラウ・ブロによく似た機体が「キケロガ」の名称になったのは、このトミノメモの記述を反映させたものと考えられる。

　なお、トミノメモにてシャリア・ブルに与えられた機体名は「ゲルググ」だった。だが、そのゲルググはニュータイプ専用機として描写されており、アニメ『ガンダム』におけるゲルググではなく、ブラウ・ブロに相当する機体である。

　ちなみに、キケロガの武装やビジュアル設定などはトミノメモには書かれていないが、その後、アニメ『ガンダム』に登場する「ジオング」のプロトタイプ機として、模型雑誌やゲームなどでデザインが起こされた。