■生真面目だけど実はとても良い先生「家庭教師がやってきた」の巻

 コミックス2巻に掲載されている「家庭教師がやってきた」の巻は、さくら家に初めて家庭教師がやって来る話だ。

 お姉ちゃんに家庭教師が来ると知ったまる子は、爽やかなお兄ちゃん先生を期待するが、実際に来たのは堅物そうなメガネをかけた大学生だった。

 それでもかまってほしいまる子は、お姫様の絵を描いて先生に渡すなどして絡んでいく。しかし、“勉強の邪魔ですよ”と言われて拗ねてしまうまる子。

 2週間の家庭教師期間が過ぎ、別れの日、先生はまる子にレアな切手をプレゼントしてくれた。反省したまる子が“また遊ぼうね!”と叫ぶと、先生は爽やかな笑顔で応えてくれるのであった。

 登場は一回きりだったが、もしさくら家でその後も家庭教師として通い続けていたら、きっとまる子と楽しいやり取りを続けてくれただろう。真面目そうなポーカーフェイスの大学生だったが、「ほんとはまる子さんとお手玉などで遊びたかったのですが…」と伝えてくれるあたり、なんとも好青年であった。

■切ないエピソードでいじめの残酷さを訴えた「たかしくん」の巻

 コミックス12巻に掲載されている 「たかしくん」の巻は『ちびまる子ちゃん』の中でも切ないストーリーだ。

 まる子のクラスメイトのたかしくんは、毎朝遅刻することもあり、男子たちにいじめられていた。まる子がそのことを家族に話すと、みんな“もしもまる子がいじめられている立場だったら……”と考え、涙ぐむのであった。

 その後、たかしくんをかばったまる子はいじめっ子から叩かれ、その衝撃で負傷し、流血してしまう。「…学校でぶたれてケガしたなんて言ったら……おかあさん泣いちゃうよ」とつぶやくまる子に、クラスメイトもことの重大さを思い知るのであった。

 たかしくんを通して、いじめが子どもだけでなく、その家族も深く傷つけるというテーマを読者に伝えたこのエピソード。原作では物悲しい雰囲気で終わっているものの、アニメではその後いじめっ子たちが謝るシーンも追加されていた。これを機に、クラスの雰囲気が良い方向へと変わっていったと信じたいところだ。

 

 『ちびまる子ちゃん』のような長寿作品では、1度しか登場しないキャラクターも多くいる。これらのレアキャラたちは、その登場が一度きりだからこそ、より鮮烈な印象を残したのだろう。

 現在もアニメで放送中の『ちびまる子ちゃん』では、今後も新たなキャラクターが登場するだろう。もしくは、ここに紹介してきたキャラたちのあっと驚く再登場もあるかもしれない。ぜひ、当時を思い出しながら、本作をあらためて見返してみてはいかがだろうか。

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