
1986年から少女漫画誌『りぼん』(集英社)で連載された、さくらももこさんによる『ちびまる子ちゃん』は、言わずと知れた国民的ギャグ漫画だ。主役のまる子をはじめ、父・ヒロシや祖父・友蔵、親友のたまちゃんなど、おなじみのキャラクターならすぐに思い出せる人も多いだろう。
しかし、本作には、たった1回しか登場していないのに強烈な個性でインパクトを残したキャラクターが多くいる。今回は、原作漫画『ちびまる子ちゃん』に登場した「知る人ぞ知るレアキャラたち」を紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■インパクトのあるビジュアル…謎の転校生「5月のオリエンタル小僧」
りぼんマスコットコミックス2巻「ももこのほのぼの劇場」に「5月のオリエンタル小僧」という話がある。ここに登場するのは、目鼻立ちがくっきりとした折原まさる君だ。
まる子のクラスに転校してきた折原君だが、なぜか容姿からみんな彼を避けてしまう。しかし折原君が妹に優しく接する姿や、クラスに馴染めるようこっそり学級歌を練習したりする姿を知ったクラスメイトが、最終的には彼を受け入れ仲良くなる話だ。
本作はアニメでも放送されたが、残念ながら彼はその後、登場することはなかった。その理由は、この原作が『ちびまる子ちゃん』の話ではなく「ももこのほのぼの劇場」でのストーリーだからだろう。
作中、最後は折原君がクラスメイトと打ち解け、給食当番に立候補するなどすっかり馴染んでいる姿が描かれており、ほっとした読者も多かったことだろう。思い返してみると非常にインパクトのあるキャラだったので、いつかアニメなどでの登場を期待したいところである。
■迷子のまる子に親切にしてくれた女子高生「まるちゃん 遠くのしんせきの家へあそびにいく」の巻
『ちびまる子ちゃん』が人気の理由は、当時の少女漫画には珍しい「毒舌シーン」も多くあったからだろう。それが顕著に現れているのが、コミックス3巻に掲載されている「まるちゃん 遠くのしんせきの家へあそびにいく」の巻の1コマだ。
親戚の家に行く途中で道に迷ってしまったまる子は、近くにいた女子高生2人に目をつける。まる子は優しそうな美人の女子高生に助けを求めるが、案内してくれたのはまる子曰く“見た目の悪い”ルリ子という女子高生だった。
道を教えてもらったまる子はその後「ふー ブスのおかげで助かったよ」と言っており、ナレーションでは「なんてありがたみのない感謝のしかただ」と、ツッコミが入っている。
今ならルッキズムだ!というお叱りも入りそうな場面だが、思えば当時の『ちびまる子ちゃん』ではこんなシーンもちょくちょく登場していた。
ちなみに、せっかく親切にしたのにひどい言われようだったルリ子だが、彼女も「こんなガキ相手にしているんだから『やさしい娘だな』ってステキなヒトが見ていてくれるかしら」とか、「ホラ やさしいわたしの最後の一瞬よ みんな見てっ」と心の中で言っており、下心があるのも面白い。『ちびまる子ちゃん』は、こうした人の裏の心情を描く名作なのだ。
■まる子海外への一人旅! 茶目っ気のある印象的なおじさん「まるちゃん 南の島へ行く」の巻
コミックス6巻に掲載されている「まるちゃん 南の島へ行く」の巻は、まる子が一人南の島へ旅行へ行く話だ。そこでまる子はプサディという島の女の子と友情を育むのだが、ここでもインパクトに残るキャラが登場する。それが、飛行機でまる子の隣の席になったおじさんだ。
恰幅が良く、パンチパーマのような髪型でくるんとした髭を生やしている見た目の怖いこのおじさんは、機内でまる子にジュースをくれるなど優しい面も見せていた。
一方、“この飛行機は着陸で失敗するかも”と言ってまる子を怖がらせてからかったり、島では顔に化粧をしてまる子と一緒に踊ったりと、茶目っ気もある掴みどころのないキャラだった。
この話で驚かされるのが、おじさんが機内で堂々とタバコを吸っていたり、まる子の部屋の同室者が中2男子だったりと、良くも悪くも当時のルールがおおらかな点だ。小学校3年生で海外旅行へ1人で行けるシチュエーションも、昭和ならではの設定だなあと感心させられる。