まさかの残酷シーン連続…ジャンプ伝説の異色作『メタルK』少年誌とは思えぬトラウマ展開の画像
Kindle版『メタルK』(ビーグリー)

 1980年代の中盤から1990年代の中盤にかけて『週刊少年ジャンプ』(集英社)は「黄金期」と称され、「1995年 新年3・4合併号(発売は1994年12月)」に発行部数653万部を記録する偉業を成し遂げた。

 そのジャンプ黄金期の1986年に連載され、当時の読者を驚かせたのが、巻来功士(まきこうじ)氏によるハードコアバイオレンス漫画『メタルK』だ。

 同作は2026年で「40周年」を迎えることもあり、2025年に最新作『メタルK Legend 復活編』発刊プロジェクトがスタート。このクラウドファンディングには多くの支援者が集まり、すでに目標金額を達成している。

 連載開始から40年近くが経過した現在も熱烈なファンに支持されている『メタルK』。そこで当時リアルタイムで読んでハマった筆者が、『メタルK』に描かれた衝撃展開を振り返ってみたい。

※本記事は作品の核心部分の内容を含みます。

■少年誌の常識をぶっ壊した意欲作!

 巻来功士氏といえば、オカルト要素にセクシー描写やグロテスクな表現を加えた作風が魅力。神と悪魔の戦いを描いた『ゴッドサイダー』(1987年より連載)や、アステカ神官の異能を受け継いだ主人公が殺し屋になる『ミキストリ -太陽の死神-』(1990年より連載)なども知られる。

 そして『ゴッドサイダー』より先に連載していたのが『メタルK』であり、巻来氏の作風を確立させた原点ともいえる作品だ。

 本作は両親を殺され、自身も生きたまま焼かれた美しい少女・冥神慶子(みょうじんけいこ)が主人公。彼女はサイボーグとして死の淵から蘇り、裏切りと陰謀の渦巻く世界で復讐の道を歩むことになる。

 当時『ジャンプ』では、『北斗の拳』『キャプテン翼』『キン肉マン』など、少年漫画らしい男性主人公の作品が人気を博していた。そんななか『メタルK』の主人公は女性であり、目を覆うような残虐なシーンが続出する“陰惨な戦い”が描かれた作品は、当時の少年誌ではかなり珍しかった。

 巻来氏の著書『連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏』(イースト・プレス)によると、担当編集者から「少年誌の常識ってやつをブチ壊す作品だ」と助言をもらい、当時主流だった「希望」をテーマに描く作品に対する反骨心で創り上げたのが『メタルK』だという。

 結果的に連載は早期終了となったが、その過激な作風は『ジャンプ』の読者に大きな衝撃を与え、40年近く経った今も熱烈なファンから支持されているのだ。

■女性主人公を襲った、あまりに残酷な仕打ち

 『ジャンプ』の三原則といえば「友情」「努力」「勝利」だが、個人的に『メタルK』を構成する三原則として「残虐」「復讐」「憐憫」が思い浮かぶ。

 大企業「冥神工業」の社長の一人娘である18歳の慶子は、身も心も捧げた婚約者・兵藤勇に裏切られ、両親や愛犬・ジェイソン、そして慶子自身も銃で撃たれる。さらに兵藤は「フフ…かわいいものを徹底的に破壊するのもなかなか おつなもんだぜ」という恐ろしい言葉を投げかけ、生きたまま彼女の体を焼いたのである。

 彼女の婚約者だった兵藤は実は世界の軍事武器を扱う「組織(ユニオン)」に属しており、冥神工業を乗っ取る目的で冥神親子を惨殺したのだった。18歳の美しい女性を襲ったあまりにも理不尽な惨劇は、とても『ジャンプ』作品とは思えないほどの衝撃があった。

 だが、冥神社長を慕う「伊郷瑠(イゴール)」という男の手により、慶子はサイボーグ「メタルK」として復活する。サイボーグ化するのに事件から15年の月日が経過しており、慶子の実年齢は30歳を超えていた。それなのに眠っていた慶子の脳は、惨劇のことを「つい最近の出来事」と認識しているのも残酷である。

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