■ジャンプ作品とは思えないドギツイ恐怖描写

 そしてサイボーグの「メタルK」となった慶子の復讐劇が始まる。

 サイボーグ化した慶子は感情が昂ぶると黒いオイルの涙を流しながら体が発熱。外皮が溶けだして愛らしい顔は「ズルッ」とただれ落ち、醜い機械部分がさらされる。その姿は、子ども心にショッキングだった。

 さらに溶けた皮膚はゼリー状の濃硫酸となる。復讐のため慶子に抱きつかれた元婚約者の兵藤の体の皮と肉はグチョグチョに溶け崩れ、泣き叫びながら骨になるのだ。その復讐手段は、とても『ジャンプ』作品の主人公とは思えないほどグロテスクで恐ろしかった。

 女性キャラは美しくかわいくあるのが当然だった時代に、自分の皮膚を硫酸の武器(硫酸鞭)にして、不気味な機械の身体をさらして戦う慶子の存在は明らかに異色である。

 続く第2話も忘れられないトラウマエピソードだ。冥神親子の殺害に加担した女性が、無人島で「人間狩り(マンハント)」という残虐行為を楽しんでいた。それは裸にした人間に獣のマスクをかぶせて撃ち殺し、断末魔を堪能するという悪趣味極まりないものである。

 その女性は兵藤の情婦であり、慶子に向けて銃を発砲。しかし慶子の鋼鉄の体に弾き返された銃弾は、彼女の顔面を醜くえぐって絶命させた。あまりにも身勝手な外道たちに対し、慶子が憐憫に満ちた表情を浮かべるのが印象的だった。

■未完で終わった復讐劇

 その後、物語は兵藤たちを背後で操っていた秘密結社「薔薇十字軍(ローゼン・クロイツ)」との戦いへと突入する。

 宇田川優という青年もサイボーグ化し、慶子の仲間となって戦うことになるが、大勢の敵を前にふたりが「いこうぜ地獄へ…」「エエ 地獄をつくるために……」というセリフを最後に、わずか10回で『メタルK』の物語は幕を閉じることになった。

 慶子にようやく仲間ができて、かすかな光明が見えた矢先の連載終了の報に、ショックを受けた読者は多いのではないだろうか。筆者も心のどこかで連載終了を薄々感じながらも、実際発表されたのを目の当たりにしたときはかなりガッカリした。

 実は『メタルK』は、連載第2週目で“巻末掲載”を経験した異例の作品でもある。『ジャンプ』はアンケートの投票数で人気を測るというが、連載開始の翌週に巻末に掲載されたのは、アンケート集計のタイミングを考えてもかなり異例だ。

 作者の巻来氏は著書『連載終了!』のなかで、巻末の掲載になりながらも熱いファンレターが増えたが、「会議の結果『メタルK』はあえなく10回で終了となった」とその無念さを明かしている。

 異色の作品ではあったが連載が早期終了になったことこそ、物語を楽しみにしていたファンにとって最大のトラウマなのかもしれない。


 その後『ニューカマー ~来るべき者達~(REVENGER METAL-K2)』(新潮社)という作品が全5巻で刊行されたが、こちらは「軍茶利慶子」という別の女性が主人公の、いわゆる派生作品。実は『メタルK』の終了から35年後、巻来氏の手が空いたときに同人誌として発表した『メタルK Legend』が正式な続編である。

 そして2025年1月、「巻来功士 連載開始40年前夜祭企画&最新作『メタルK Legend復活編』発刊プロジェクト」というクラウドファンディングが開始され、すでに目標額を達成している。

 巻来氏が『メタルK』を描き続け、あらゆる発表方法を模索したことで40年経ってから新しい物語を読むことができるのは、ファンにとってうれしいかぎりだ。

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