■レッドリボン軍の女性幹部「バイオレット大佐」

 人魚の美女キャラを紹介したので、もう一人、印象に残る美女キャラを取り上げておきたい。

 それは、其之九十三「孫悟空突撃」に登場した、レッドリボン軍のバイオレット大佐だ。紫のショートヘア、タンクトップとアーミーパンツの軍装スタイルが実にクール。レッドリボン軍の数少ない女性幹部ということもあり、ほかの構成員とはひと味違う存在感を放っていた。

 しかし、原作での出番はレッド総帥にドラゴンボール回収の報告をするだけの、わずか2コマ。魅力的なビジュアルを持っていただけに、非常に惜しかった。

 アニメスタッフもその点に注目したのか、実はアニメでは彼女の登場回数が大幅アップしている。部下を冷淡に使い捨てながらドラゴンボールを回収、さらに本部に戻っての報告シーンではレッド総帥に対して堂々と報酬を要求し、ふてぶてしい態度をとる。

 さらに、悟空によるレッドリボン軍本部襲撃の際にはあっさりと組織を見限り、混乱のどさくさに紛れて基地の金庫を爆破、金品を強奪して脱出するという見事な裏切りぶりを見せてくれるのであった。

 バイオレット大佐の登場は原作ではわずか2コマにすぎなかった。アニメで明確なキャラクター性と活躍シーンを与えられたのは、彼女のビジュアルにそれだけのインパクトと魅力があったという証拠だろう。

■入院患者・悟空に圧倒される「看護師」

 最後は、さらにマニアックな女性キャラクターを紹介したい。

 其之二百五十「孫悟空 復活!!」にて。ベジータとの死闘で満身創痍となった悟空が包帯ぐるぐる巻きで病院に入院しているシーンで登場するのが、悟空を担当していた女性の看護師である。

 黒い十字が入った大きな白いナースキャップに、黒の長袖ワンピースと白いエプロンという出で立ちで登場した彼女は、19世紀後半のナイチンゲール時代の看護婦のようだ。近未来とレトロが同居する“鳥山ワールド”らしいユニークなビジュアルである。

 そんな看護師は終始、悟空たちの行動に圧倒されていた。重傷にもかかわらずトレーニングをする悟空、さらには見舞いに来た亀仙人にどさくさ紛れにお尻を触られる。極めつけにはヤジロベーが持ってきた仙豆を食べて悟空は一瞬で全快し、クルクルとベッドを飛び起き、そのまま筋斗雲に乗ってどこかに行ってしまう。

 そんな慌ただしい展開のなか、終始目を見開いてビックリしている看護師の姿が実に可愛らしく印象的であった。

 

 今回紹介したキャラは、物語の核心に深くかかわるわけではない。だが、ちょっとした登場だけでインパクトを残したのは、鳥山さんのデザイン力とキャラクター演出の妙があってこそだ。

 チャーミングなビジュアル、短いシーンに凝縮された個性、そして何より「もっと見ていたい」と思わせる余韻。そんな魅力が詰まったキャラたちは『ドラゴンボール』の隠れた名物と言えるだろう。

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