
1996年にゲームボーイ用ソフトとして『ポケットモンスター 赤・緑』(任天堂)が発売されて以来、シリーズを重ねて累計1000体以上の種類が誕生してきた「ポケットモンスター」。ポケモンたちはみな個性豊かで、いくつになっても集めたくなる魅力にあふれている。
そんなポケモンたちのさまざまな設定が記されているのが、コンプリートには不可欠なアイテム「ポケモン図鑑」だ。この図鑑では誕生や生態に関する説明も見られるのだが、中にはそのかわいらしい姿からは思いもしなかった、「切ない設定」を持つポケモンも珍しくない。今回はそんな切なくも愛おしいポケモンを見ていきたい。
■カセキを合成して現代に蘇った古代のポケモン「ウオノラゴン」
『ソード・シールド』には、カセキのトリ・サカナ・クビナガ・リュウのうち2種類を研究者のウカッツ博士に渡すことで復元される4体の化石ポケモン、通称カセキメラが登場する。
彼らは、全ポケモン中でもトップクラスでアンバランスな外見の持ち主だ。たとえば「カセキのトリ」と「カセキのクビナガ」を組み合わせて復元する「パッチルドン」は、ガッチリした氷漬けの下半身に、常に鼻水を垂らして震えている細い上半身という見た目。辛そうな表情も相まって、なんだかかわいそうな気持ちになってしまう。
その上をいくのが「カセキのサカナ」と「カセキのリュウ」を組み合わせて復元する「ウオノラゴン」だ。ウオノラゴンは、奇抜な色をした断面丸見えのドラゴンのしっぽの先に魚の頭部と胸ヒレが付いているというショッキングなポケモン。しかも2.3mと結構な巨体だ。この頭部は古代魚のダンクルオステウスをモチーフにしたとも言われているが、どうしてこんな個体を作ったのか……と不安になってしまう。
ソードのポケモン図鑑には、「ずばぬけた きゃくりょくと アゴの ちからで こだいでは むてきだったが えものを とりつくし ぜつめつした」と書かれている。最強すぎて絶滅というのも切ないが、気になるのはまるで古代からこの状態で生息していたかのように書かれている点だ。
一方で、シールドの図鑑では「じそく60キロを こえる じまんの きゃくりょくで はしれるが すいちゅうでしか こきゅうできない」と語られている。下半身と上半身の説明が一緒になっているのだろうか……矛盾のあるこの一文で、さらに謎は深まった。
■何とか綿を守ってずっと生きててほしい…「ワタッコ」
続いては、「ワタッコ」を見ていきたい。ワタッコはハネッコの最終進化系で、体の色のほか、頭部に生えていた草が花を経てふわふわでまん丸な綿毛に変化したポケモンだ。
『リーフグリーン・ハートゴールド』の図鑑には「いちど かぜに のってしまうと わたほうしを たくみに あやつって せかいいっしゅう だってしてしまう」と書かれており、いつも自由気ままに世界中を漂っていることが分かる。
さらに、旅の途中で胞子をばらまき、それらが次のハネッコになるという、まるでタンポポのような生命のサイクルのワタッコ。だが、『スカーレット』の図鑑には「季節風に 乗り 旅をする。 綿胞子が 尽きるとき 旅と ワタッコの 一生は 終わる」という切なすぎる一文が……。
次の世代に命を繋げるこの行動は、自分の命を削る行動でもあるのだ。なんと儚い人生だろう。綿胞子がなくなるまでどのくらいかかるのかは不明だが、なくならないようにカバーをつけたくなるのは筆者だけだろうか。
■命がけで生きる健気なポケモン「バネブー」
『ルビー・サファイア』で初登場した「バネブー」も、図鑑でちょっぴり切ない生態が判明している。
バネブーは頭に2まいがいポケモン「パールル」の作ったピンクの大きな真珠を乗せた子豚の姿をしており、足の代わりにバネ状の尻尾で飛び跳ねながら生活しているという、「豚に真珠」のようなポケモンだ。頭の真珠はサイコパワーを高める媒体となっており、いつも大きな真珠を探しているのだとか。
バネブーの心臓は自発的に動かないため、飛び跳ねる行為がポンプのような役割を果たし、その振動によって心臓が動いている。ゆえに、寝るときもご飯を食べるときも飛び跳ねていないといけない。
『ファイアレッド・リーフグリーン』の図鑑では、「いつも とびはねて いないと しんで しまう らしい。パールルの つくった しんじゅを あたまに のせている。」と衝撃の設定が明かされている。なかなかのハードな生態に切なくなると同時に、もしも段差でつまづいたり山道で転んだり落ちたりしたら……と考えると心配になってしまう。