■人懐っこいのに一緒にいると危険というジレンマ「ボチ」

 最近の作品では、『スカーレット・バイオレット』に登場した「ボチ」も印象深い。ボチは、大きな口と目が隠れるほどの体毛を持つ、おばけいぬポケモン。頭にはロウソクが刺さっており、普段は地中にいてロウソクだけを地上に出して人を誘う。

 人が来ると全身を出して驚かせるが、それはあくまでも構ってほしいから。極めて人懐っこいうえに寂しがりやゆえ、ちょっと構うと大喜びしてずっとついてくるという純粋でかわいいポケモンなのだ。

 この人懐っこさの理由は、『スカーレット』の図鑑で「人と 関わることなく 命を 落とした 野良の 犬ポケモンが 生まれ変わったと 言われている」と明かされている。生前の孤独から、ポケモンになって人との触れ合いを求めているとは、悲しい設定に胸が痛む。

 さらに切ないのが、ボチがゴーストタイプであること。そのため、本人が無自覚のうちに少しづつ近くにいる人間の正気を吸い取ってしまうのだ。ボチがどれだけ構ってほしくとも、人間からすれば一緒にいればいるほど正気を吸い取られるため、多少の距離を取らざるを得ないという、犬好きのプレイヤーからすると切なくて仕方がないポケモンだ。

■悲しい過去に涙するプレイヤー続出「カラカラ」

 最後は、今なお多くのプレイヤーから「かわいそう……」と声があがる「カラカラ」を見ていこう。初代作から登場する小さい恐竜のようなカラカラは、頭蓋骨を鎧兜のように被って手には骨を持っている、これまたキュートなポケモンだ。 

 『赤・緑』をはじめ、ほぼすべてのポケモン図鑑に書かれているのが、この頭蓋骨と手持ちの骨が死に別れた母親のものだということ。しかも、母親を思い出しては寂しくなり夜な夜な泣くというのだ。

 『ダイヤモンド・パール』の図鑑では、「しにわかれた ははおやを おもいだし ないてしまうとき あたまに かぶった ホネが からからと おとを たてる」と名前の由来も明かされている。実際のゲームでは生まれた時点で頭蓋骨を被っているものの、図鑑のテキストの切なさに涙が出そうになってしまう。

 さらに、その泣き声で天敵のバルジーナに見つかるという不憫な状況に陥るカラカラ。だが、ガラガラに進化を遂げるとか弱さも一変。「ははおやに あえない かなしみを のりこえた カラカラが たくましく しんかした すがた」という『ルビー・サファイア』の図鑑の通り、凶暴性が増している。これはこれで、良い進化なのだろう。

 このほかにも、ポケモンの中には思わず二度見するような切ない設定のポケモンたちがいる。こうやって背景を知ることで、ただ集めるだけでなくよりポケモンたちを大切にしたくなるものだ。

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