■激動の時代に輝く愛…アンドレの献身がなければオスカルの存在もなかった

 ストーリーが進むにつれ、すっかり頼りがいのあるたくましい男性となったアンドレ。彼は単に強いだけではなく、オスカルのことを全身全霊で包む優しさがあった。

 アンドレは黒い騎士に変身して目に負傷した際、「片目くらいいつでもおまえのためにくれてやるさ」と伝え、オスカルを泣かせている。

 その後、アンドレはその傷が元で、負傷していないほうの目も見えにくくなってしまうのだが、そのことをオスカルに悟られまいと一生懸命普段通りの生活を送る。それはオスカルに余計な心配をかけたくない気持ちと、目が原因で戦場に行けなかったら彼女を守ることができないためだった。

 アンドレはフランス革命にてオスカルを庇って銃弾に倒れ、この世を去ってしまう。悲しみのあまりオスカルは“自分も撃ってくれ”と泣き叫ぶが、そんな彼女を再び奮い立たせたのも、「武官はどんなときでも感情で行動するものじゃない」というアンドレの残した言葉だった。

 その言葉を胸にオスカルは自分が正しいと思った信念の元、バスティーユ牢獄への攻撃を指示し、自ら指揮を執る。そして、見事陥落させ「フ…ランス…… ばんざ…い…!」の言葉を残し、散っていった。

 振り返ってみると、アンドレはオスカルが生きる上でなくてはならない存在であり、彼女にとって生きる指標でもあったように思う。

 

 アンドレはこのほかにも、オスカルを守るために彼女の父親であるジャルジェ将軍に楯突いたり、不安がるオスカルに対し「死ぬまでそばにいてやるぞ」と優しく抱きしめたりと、数えきれないほどオスカルを支えてきた。オスカルが“男装の麗人”として華々しい人生を送れたのも、アンドレの存在なしではありえなかっただろう。

 今年、公開された劇場アニメは素晴らしかったが、ただ、その制限された時間内ではどうしてもアンドレの魅力をすべて伝えきることは難しかったように思う。ぜひこの機会に原作漫画を読んで、アンドレの魅力を感じてみてはいかがだろうか。

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