『ベルサイユのばら』オスカルを命懸けで愛したアンドレがいかにイイ男だったのか…原作漫画を振り返ってみたの画像
フェアベルコミックス『ベルサイユのばら』第8巻(フェアベル)

 2025年1月より公開された劇場アニメ『ベルサイユのばら』は、興行収入5億円を突破し大ヒットを記録した。池田理代子氏の原作を忠実に再現した本作は、往年のファンはもちろん、初めて本作を見た人からも好評を得て、大きな反響を呼んでいる。

 しかし劇場アニメを見た人のなかには、“アンドレをもっと見たかった”、“良さをもっと描いてほしかった”という意見も少なからずあったようだ。

 このアンドレ・グランディエは、主人公であるオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを幼少期から支えてきた人物であり、『ベルばら』きってのイイ男である。そこで今回は、原作漫画に登場するアンドレとはどのような人物だったのか、彼の素晴らしさを今一度振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■オスカルが他の男性を好きであろうとも…幼少期から続くアンドレの一途な想い

 アンドレは、貴族であるオスカルのジャルジェ家の従者として登場する。両親のいないアンドレは唯一の肉親である祖母に育てられ、その祖母とともにジャルジェ家に仕えてきた。

 幼い頃からオスカルの剣の相手をし、幼馴染のように過ごしてきたアンドレだが、その頃からすでにオスカルに片想いをしており、身分違いの秘めた恋心に苦しんできた。

 オスカルがスウェーデンの貴公子・ハンス・アクセル・フォン・フェルゼンに想いを寄せていることが分かっても、アンドレは自分の気持ちを押し殺し、彼女をずっと支え続けた。

 印象的なシーンはいくつもあるが、たとえば、オスカルが独立戦争からなかなか帰ってこないフェルゼンを案じ、酒場でやけ酒を煽り、乱闘騒ぎを起こしてしまった時のこと。アンドレは酔いつぶれたオスカルを思いやり、お姫様抱っこをしてそっとキスをし、そのまま朝まで抱いて歩いている。

 またフェルゼンを忘れられないオスカルがその想いを断ち切るため、女性として煌びやかなドレスを着て舞踏会に出かけた時のこと。そのまばゆい美しさに驚いたアンドレは、自分の報われない気持ちを隠しつつ「おれの…オスカル…!!」と、心の中で叫んだりもしている。

 このようにアンドレはオスカルがどのような時でも一途に彼女を愛し、いつでも全身全霊で寄り添ってきた。こんなアンドレが側にいたからこそ、オスカルは自分の気持ちのまま奔放に行動できたのだろう。

■脇役が一変…!? 黒い騎士への変装以降は強引で男らしいキャラに

 アンドレは登場当初、命令するオスカルに対して軽口で返すような、あまり目立たないキャラだった。むしろ数多くの印象的な登場人物たちのなかでは、モブキャラのようにも見えたかもしれない。

 そんな彼の存在が一気に強まったのは、貴族を襲う「黒い騎士」に変装した時がきっかけだろう。その際、アンドレはベルナール扮する本物の黒い騎士の返りうちに遭い、片目を負傷してしまう。

 この時オスカルは、“わたしのアンドレにしたこととおなじようにしてやる“と激昂しており、このあたりから2人の関係性が徐々に変わっていったように思う。

 またフェルゼンへの想いを絶ち切れないオスカルを見て、自分の気持ちを抑えることができなくなったアンドレは「殺されたってかまわない!お前を愛している!!」と叫び、オスカルをベッドに押し倒し、キスをしている。

 こうしたアンドレの行動は物語を盛り上げ、この頃から彼はすっかりオスカルの運命の人となりうる重要なキャラになっていく。

 その後もアンドレはオスカルの見合い相手であるジェローデルに思いっきりショコラをぶっかけたり、衛兵隊のアランがオスカルに無理やりキスした際には殴りかかろうとするなど、まるで彼女のナイトのような態度をたびたび見せている。

 アンドレが優しくおどけた少年から頼りがいのある強い青年になったのは、まさにオスカルを一心に愛するがゆえの、揺るぎない信念があったからだろう。

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