
漫画やアニメなどのキャラクターが魔法を使うとき、専用の「呪文」を唱えるのがお約束だった。
1960年代から放送が始まった「東映魔女っ子シリーズ」のアニメ『ひみつのアッコちゃん』では、主人公のアッコが変身するときの呪文「テクマクマヤコン テクマクマヤコン ○○になれ~」という呪文が大流行。当時、鏡の前で「テクマクマヤコン」とつぶやいた人は多いことだろう。
70年代アニメでは『魔女っ子メグちゃん』の「テクニク テクニカ シャランラー」、80年代なら『悪魔くん』の「エロイムエッサイム」といった呪文を覚えた人もいるかもしれない。
筆者は『孔雀王』で「臨、兵、闘、者、皆、陣、烈、在、前」の九字護身法を覚え、『ふしぎ遊戯』の「朱雀召喚」の呪文は漢字の読みが難しすぎて断念した記憶がある。
そこで今回は、読者や視聴者のハートをくすぐり、思わず声に出して読みたくなる……そんな多くの人が覚えていた印象的な「呪文詠唱」を振り返りたい。
※本記事には作品の内容を含みます。
■天才美少女魔導士による、ドラゴンをも倒す最強呪文
今も多くのファンから支持され続ける、神坂一氏によるファンタジーライトノベル『スレイヤーズ』。テレビアニメやOVA、映画にもなり、主人公の美少女魔導士「リナ=インバース」は絶大な人気を誇った。
リナは自他ともに認める魔法の天才ながら過激な行動に定評があり、ついた通り名は、“ドラゴンも跨いで通る”を略した「ドラまたリナ」だ。
彼女の戦闘力はもはや災害レベルで、さまざまな場所に大きな被害を及ぼした。それを可能にするのが、恐ろしく強力な魔法の数々。とくにドラゴンを倒すほどの威力を誇る攻撃魔法「ドラグスレイブ(竜破斬)」は、リナを象徴する大技である。
この「ドラグスレイブ」を発動する際の呪文は、当時多くの『スレイヤーズ』ファンがそらで言えた。
「――黄昏よりも昏きもの 血の流れよりも紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大な汝の名において 我ここに闇に誓わん 我等が前に立ち塞がりし すべての愚かなるものに 我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを ドラグ・スレイブ」
リナの声を担当する林原めぐみさんによる、ふだんのリナとは違う落ち着いたトーンで詠唱するシーンはカッコよく、この呪文を記憶する人が続出。リナ=インバースと『スレイヤーズ』の代名詞ともいえる呪文である。
■邪悪で好戦的な超絶美形魔法使いによる詠唱
1988年、『週刊少年ジャンプ』(集英社)黄金期に連載開始となったのが、萩原一至氏が描くダークファンタジー『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』。その主人公ダーク・シュナイダーは、傍若無人で破天荒なナルシスト。なおかつ超がつくほどの女好きだ。
当時、ファンタジー的な世界観の作品で魔法使いの主人公は珍しく、型破りなダーク・シュナイダーは大人気キャラとなった。そんなダーク・シュナイダーが駆使する多彩な呪文詠唱シーンは、多くの読者を虜にする。
「ザーザード ザーザード スクローノー ローノスーク 漆黒の闇の底に燃える地獄の業火よ 我が剣となりて敵を滅ぼせ 爆霊地獄」
これは序盤の代表的な魔法「爆霊地獄(ベノン)」の呪文詠唱だ。
さらにダーク・シュナイダーが多用するようになる魔法が「七鍵守護神(ハーロ・イーン)」で、こちらの詠唱も印象深い。
「カイザード アルザード キ・スク・ハンセ グロス・シルク! 灰塵と化せ!! 冥界の賢者 七つの鍵をもて 開け地獄の門 七鍵守護神」
冒頭に7人の古代神の名が並ぶ文言のカッコよさは随一。萩原一至氏が描く呪文発動シーンの迫力も満点で、『BASTARD!!』ファンなら覚えたくなった呪文のひとつだ。