■徳川の敵を斬る宿命の少女『あずみ』上戸彩
2003年公開の映画『あずみ』(原作:小山ゆうさん)は、関ヶ原の戦い後の混乱期を舞台に、徳川政権の安定を脅かす勢力を暗殺するために育てられた少女刺客・あずみの数奇な運命を描いた作品だ。あずみを演じる上戸彩さんにとっては、本作が記念すべき映画初主演となった。
あずみの衣装は、白から青へと美しくグラデーションがかった短丈の着物に、戦闘時は黒革の胸当てと灰色の脚絆を装備。あずみの武器である俊敏な動きをさまたげず、同時に凛とした美しさも強調するデザインである。
仲間の中でも随一の剣の腕を誇る一方で、山奥で育ったため世間に疎く、無垢な一面も併せ持つ。岡本綾さん演じる“やえ”に着物や化粧を施され、はにかむ姿からは年相応の少女らしさが垣間見える。その純粋さと、任務で見せる冷徹な殺し屋としての顔。この相反する二面性が、あずみというキャラクターに深みを与えている。
クライマックスでは、別れ際にやえがくれた異国風のマントをまとい、次々と敵をなぎ倒す“怒涛の200人斬り”に突入。特にオダギリジョーさん演じる居合の達人・最上美女丸との一騎打ちは血しぶき舞う死闘が繰り広げられ、息を呑む迫力があった。
なお、上戸さんは本作の演技で高く評価され、第27回日本アカデミー賞において優秀主演女優賞と新人俳優賞をダブル受賞。『あずみ』は、彼女が女優として飛躍するきっかけとなる作品でもあった。
今回紹介した「美人刺客」たちは、決してただの華ではない。橋本環奈さんの可憐さとハードなアクション、夏菜さんのコメディ演技と色気、そして上戸彩さんが放った凛とした強さと繊細な感情表現。
いずれも異なるアプローチながら、“美しさ”そのものが武器となり、物語を動かす原動力となっている点は共通しているだろう。今後も、ただ強いだけではない、観客を魅了する“美しき刺客”たちの登場に期待したい。