■清楚なイメージは純の恋人役にぴったりだった『北の国から ’92巣立ち』
裕木さんは平成を代表する名作ドラマにも出演している。それが『北の国から '92巣立ち』(フジテレビ系)だ。
本作で裕木さんは、富良野から上京してガソリンスタンドで働く黒板純(吉岡秀隆さん)と知り合い、深い仲になるタマ子を演じている。
純とタマ子は、激しく恋に落ちたわけではない。いわば欲求にかられた純がやや強引に関係を持ってしまい、そこから2人の関係がずるずると続き、タマ子は妊娠してしまうのだ。
タマ子は最終的に堕胎を選び、純とも別れる。ドラマ後半で純との別れを決意したタマ子は、純の父親から謝罪としてもらった100万円を純に返す。思いつめた表情で「あたしはもう大人なんだし…大人として行動したんだし」と、涙する裕木さんの演技には、思わず胸が詰まってしまう。
純を見つめるタマ子の表情は非常に透明感があり、美しかった。結局幸せになることのない2人だったが、振り返ってみると国民的ドラマの中で純が初めて深い関係を結ぶ相手としては裕木さんが適役だったように思う。タマ子の、か細い声や清楚さ、ほんのり漂う色気は、裕木さんにしか出せない“味”であった。
90年代に活躍しつつも、「女性に嫌われる女優」と評されることになった裕木さん。その背景には、男女のスキャンダルに対して女性側に厳しい目が向けられやすかった社会風潮もあったように思う。そして裕木さんの迫真の演技が、実際にいるリアルな女性を想起させてしまった可能性もあるだろう。
ちなみに裕木さんは2004年からは海外進出し、映画『硫黄島からの手紙』(NAE名義で出演)や、海外ドラマ『ツイン・ピークス The Return』などにも出演している。
現在は自身のInstagramでも活躍を発信しているので、今なお輝き続ける彼女の活躍をチェックしてほしい。