■戦隊初の男性ピンク『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』雉野つよし
志葉薫が「レッド=男性」の常識を覆した存在なら、「ピンク=女性」という長年の固定観念を初めて打ち破ったのが、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』のキジブラザー/雉野つよしだ。
『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)のモモレンジャーから始まり、『機界戦隊ゼンカイジャー』(2021年)のマジーヌまで、ピンクはスーパー戦隊において“女性の象徴”のカラーであり、ある意味、レッドよりも盤石のカラーだったと言える。
その伝統を覆したキジブラザーは、『スーパー戦隊』史上初の男性ピンクのレギュラー戦士として、鮮烈なインパクトを残すこととなる。
さらに彼は、ビジュアル面でも強烈なインパクトを放つ存在だった。桃太郎をモチーフとした本作において、キジが由来の彼は巨大な翼と異様に長い足を持ち、身長はなんと220cm。まるで人間離れしたシルエットの“異形のヒーロー”だ。
一方、変身前の雉野つよしはメンバー最年長で、平凡な会社員であり既婚者。気が弱く自己主張も苦手で、職場ではパワハラに耐える日々。だが、第4話で桃井タロウと出会い「自分を変えたい」と、ヒーローとして戦うことを決意する。
強くて頼れる“カッコいいヒーロー”とは真逆の存在ながら、不器用なまでに仲間を思い、懸命に戦う姿は視聴者の共感を呼んだ。
ピンクというカラー、異形のビジュアル、そして等身大の人間像。すべてが前例を覆す要素に満ちていたキジブラザーは、まさに『スーパー戦隊』史に名を刻む常識破りの戦士であった。
『スーパー戦隊』シリーズは、長年にわたり「レッド=男性」「ピンク=女性」「リーダー=レッド」といった伝統を守ってきた。しかし、時代の流れとともに、そうした常識を打ち破るヒーローたちが次々と登場し、固定観念を覆しながら、多様性と進化を体現してきたのだ。
最新作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』における、シリーズ初の“女性ブラック”誕生も、そんな革命の一つである。
『スーパー戦隊』はこれからも、既成概念にとらわれない新しいヒーローたちを生み出し、私たちに「こんな戦隊もアリなんだ!」という驚きとワクワクを届けてくれるはずだ。