
『スーパー戦隊』シリーズ最新作『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』に登場したゴジュウユニコーン/一河角乃は、シリーズ史上初となる「女性ブラック」として大きな話題を呼んだ。「ブラック=男性」という長年のイメージを鮮やかに打ち破った彼女の登場は、戦隊の常識を大きく塗り替える出来事だった。
実はこれまでにも、こうした固定観念を打ち崩す“革命的なヒーロー”たちが存在する。今回は、そんな前例のない配役に注目しながら、スーパー戦隊が歩んできた進化の歴史を振り返っていきたい。
※本記事には、各作品の内容を含みます。
■戦隊初の女性リーダー『忍者戦隊カクレンジャー』鶴姫
「戦隊シリーズのリーダーといえば男性」。そんな固定観念を初めて打ち破ったのが、『忍者戦隊カクレンジャー』(1994年)に登場したニンジャホワイト/鶴姫だ。
シリーズ第18作目にして、初の“レッド以外のリーダー”であり、そして記念すべき“女性初のリーダー”となった鶴姫は、メンバー最年少かつ唯一の女性でありながら、責任感とリーダーシップを持ち合わせた人物であった。
第1話「忍者でござる」では、妖怪の封印が解かれてしまったことでカクレンジャーを招集した鶴姫。レッドのサスケ、ブルーのサイゾウを率い、ニンジャホワイトとして堂々とセンターで名乗りをあげる。その姿は、まさに戦隊シリーズにおける女性リーダー誕生の象徴的シーンであった。
さらに、2019年放送のクロスオーバー作品『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』では、歴代の戦隊ヒーローたちが「変わり者チーム」「剣豪チーム」など個性別のユニットを組み、最強の称号をかけて競い合う。そこでも鶴姫は「リーダーチーム」の一員として参戦し、歴代戦隊の中でも象徴的なリーダーとして登場していた。
■戦隊初の女性レッド『侍戦隊シンケンジャー』志葉薫
スーパー戦隊における「レッド=男性」という長年の常識を根本から覆したのが、『侍戦隊シンケンジャー』(2009年)に登場した女性のレッド・シンケンレッド/志葉薫だろう。
彼女が初登場するのは、物語も終盤に差しかかった第44話「志葉家十八代目当主」。それまでレッドとして戦っていた志葉丈瑠は、実は“影武者”であり、本物のシンケンレッドは薫だったという衝撃的な事実が明かされる。
志葉家の正統な当主として現れた薫は、シリーズ史上初となる“女性のレッド戦士”として大きな話題を呼んだ。
“本物の当主”という立場から、当初は横暴な人物を想像した視聴者も多かったかもしれない。しかし実際の薫は、若くして当主の器を備えた落ち着きある人格者であり、影武者である丈瑠や家臣たちに対しても思いやりと敬意を持って接する人物であった。
だからこそ仲間たちは「本来仕えるべき当主・薫」と「共に戦ってきた丈瑠」の間で葛藤し、物語は複雑な人間ドラマを深めていくことになる。
最終的に薫は年上である丈瑠を自分の養子として迎え入れ、真のシンケンレッドへと据えるという大胆な決断を下し、自らは潔く退く。その懐の深さと器の大きさは、まさにリーダーにふさわしい風格を漂わせていた。シリーズにおいても、唯一無二の存在感を放つ女性レッドだと言えるだろう。