■妖怪たちの百鬼夜行!『平成狸合戦ぽんぽこ』タヌキの化け姿

 1994年公開の『平成狸合戦ぽんぽこ』は、高畑勲さんが監督を務めた作品だ。可愛らしい見た目のタヌキたちが登場するほのぼの系作品かと思えば、非常に重厚なテーマが潜む高畑さんらしい作品である。

 本作で紹介したいのは、タヌキたちが人間たちを驚かそうと決行する百鬼夜行での一幕。水木しげるさん原作の『ゲゲゲの鬼太郎』に始まる妖怪ブームもあり、このシーンでは馴染みのある妖怪もチラホラ登場する。

 夫を出迎えた妻が背後に迫る大きな妖怪を見て気を失ったり、虹を楽しそうに渡る妖怪たちの姿をベランダからビデオカメラで撮影したりと、“妖怪と対峙した人間たち”の反応も楽しめるシーンだ。

 なかでも筆者の記憶に強く残っているのが、屋台で酒を酌み交わす人間の背後からヌルリと妖怪に化けたタヌキが登場し、クルクルと首を回すシーンだ。気配を感じた人間が振り返る前に姿を消すのだが、その様子が実に“お化け”らしくて怖かった。

 だが、大人になって見てみると本作で本当に恐ろしいのは、タヌキたちが自分たちの住処を守るため命を賭して決行した作戦でさえ、人間にとっては一種のパフォーマンスと捉えられてしまったことだ。怖いというよりは、切ない名シーンといえるのかもしれない。

 

 ジブリ作品に登場する『風の谷のナウシカ』の巨神兵や、『もののけ姫』のタタリ神など強烈なインパクトを残すキャラクターは「トラウマ級」として有名だ。

 しかし、今回のように子どもの時にちょっと怖かったキャラクターというのも、挙げてみると意外とあるものだ。大人になって見るとそうでもないのだが、当時は怖かった彼ら。

 当時を思い出しながら、新しい視点で作品を見返してみてはいかがだろうか。

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