■カラカラと動く首、赤く光る目『もののけ姫』「コダマ&猩々」
1997年公開の『もののけ姫』。生と死を操るシシ神が住む森を舞台に、人間と動物、そして“もののけ”の戦いを描いた物語だ。
本作には衝撃的なビジュアルのキャラクターたちが登場する。たとえば、ウネウネと黒い触手に覆われたタタリ神や、鹿のようなフォルムをしているが顔は猿や人間を彷彿とさせる謎の生物・シシ神……。
幼い頃に映画館で本作を見た筆者だが、子どもながらに不気味に感じたのは、森の精霊「コダマ」だ。小さな子どものような姿をしているコダマは森を訪れたアシタカと一緒に走ったり、おんぶして歩いたりと無邪気な姿がとても愛らしいキャラである。
だが、その一方、シシ神を呼ぶときにカラカラと首を揺らす仕草は奇妙だった。人間ではあり得ない首の動き方で、木の上に大勢集まって首を揺らす彼らが怖かった。
そして、忘れられないのが猿の神「猩々」だ。木を植えて森を取り戻そうとしている猩々は、森を破壊する人間を憎んでいる。人間を食べて知恵を手に入れようと考えている彼らは、重傷で意識のないアシタカを渡すようにサンにけしかける。
赤く目を光らせ、低く轟くような声で「オレタチ ニンゲン クウ」と、石を投げる様子にはゾッとした。
大人になってみると猩々の言いぶんは理解できるし、コダマも神聖なものとして受け取ることができるが、初見で見た当時はインパクトが大きかった。
■イケメンがバケモノに変身していく…『ハウルの動く城』「ハウル(鳥人バージョン)&荒地の魔女の使い魔」
2004年に公開された『ハウルの動く城』は、ダイアナ・ウィン・ジョーンズによる小説『魔法使いハウルと火の悪魔』を原作にした作品だ。
見目麗しい魔法使い・ハウルと、自分に自信のない主人公ソフィー・ハッターの不思議な出会いが描かれた本作。冒険もあり、恋愛要素もありと見応えのある作品だ。
金髪が似合うイケメンのハウルは、声を担当した木村拓哉さんの演技もあり、ジブリ屈指の人気キャラクターの1人だ。女性の扱いがうまく、スマートな振る舞いをしていたかと思えば、荒地の魔女や師匠・サリマンを恐れる子どものような一面もある。
筆者もそんなハウルが大好きなファンの1人であるが、しかし、彼の“ある姿”だけはどうしても怖かった。
それが、「鳥人」姿だ。魔法使いのハウルは戦場へ向かう際、大きな鳥のような姿に変身する。『千と千尋の神隠し』の湯婆婆も大きな鳥へ変身していたので、ジブリ作品ではお馴染みだろう。
だが、変身するだけならまだしも、自我を失いながら鳥人に変身しているハウルの姿は人と鳥の姿が入り混じり、普段とは違った様子にゾクリとしてしまう。
また、「荒地の魔女の使い魔」たちも得体の知れない怖さがあった。黒くドロドロとした体を人間のような姿に変え動く彼らは、ひたすらに気味が悪い。ドロドロと溶けながらソフィーとハウルを追いかけたりと、子どもながらに『もののけ姫』のタタリ神を彷彿とさせるトラウマもののキャラクターだった。