■衝撃の判定決着!板垣VS今井
一歩の後輩にして、アマチュアボクシングでトップクラスの強さを誇った板垣学。そんな彼はプロになり、その厳しさを経験してさらに強くなった。やがて、彼は東日本新人王の決勝戦に臨む。その相手は学生時代に敗北を喫している今井京介だった。今井は一歩に似たファイトスタイルのインファイターで、かつてアマチュア時代に無類の強さを発揮した人物だ。
板垣はスピードはトップクラス、テクニックも申し分ない。しかし、「意外性がない」という弱点を抱えていた。一方の今井はすでにプロとして通用するほどに強く、試合前の段階では今井の勝利を鷹村守と一歩の両者が予想しているほどだった。
そして板垣はその事実を突きつけられ、ある決断をする。それは接近戦によるアウトボクシング。これは宮田をして「まさか新人王レベルでこれほどの芸当を見せられるとは思っていなかった」と言わせるほどだ。
今井はその才能に圧倒されつつも、試合は徐々に今井のペースへと変わっていく。板垣はそのパンチ力の前にスピードを失い、瀕死の状態。しかし、倒れることなく最後まで戦い続けた。両者ともにボロボロの状態となり、勝負は判定にもつれこむ。
そしてその判定は、序盤に今井をスピードとテクニックで圧倒した板垣の勝利という劇的なもので終わる。ようやくアマチュア時代の因縁にケリがついた瞬間だった。
板垣と今井。この2人の関係性はその後も続いていき、やがて日本タイトルマッチで再び相まみえる。この時の判定の結果が、二人のボクシング人生に影響を与えて、日本の頂点を決める戦いで再び激突するのも感慨深かった。
判定で終わる試合では、まさかの結末が描かれることが多い。KOでの決着ではないために、その判定に納得しないという展開も描かれる。一歩の試合にはない独特の人間ドラマが描かれ、ボクシングの新たな魅力も垣間見える。
時に疑惑を生み、時に泥試合に、さらには驚きの決着……と、さまざまな側面が見られる判定で終わった試合は、『はじめの一歩』をさらに面白いものにしている。