■「ダサい名前の必殺技」は『ONE PIECE』にも…

 王道ジャンプ漫画の『ONE PIECE』には、技名のセンスに賛否が分かれるものが複数ある。中でも特筆すべきは、フランキーの「新鮮一番お野菜パンチ」であろう。燃料としてコーラを必要とする彼が、チョッパーのミスで野菜ジュースを飲まされ、出力がガタ落ちになった際に繰り出したこの技。威力はものすごく弱いが、名前のインパクトだけはやたら強い。一発ネタではあるが、あまりにもシュールで記憶に残るため、今でもファンの間で語り継がれている。

 また、敵キャラで頭一つ抜けているのが百獣海賊団の飛び六胞の1人・ブラックマリアだ。メリケンサックでただ殴るだけの「花魁ナックル」、ネットで捕まえた相手を意のままに操る「お静マリア」、ネットに火を放ち、広範囲を炎上させる「炎上(あたた)マリア」という技名には、読者からしばしばツッコミが入っている。ただ、作者の尾田栄一郎氏が単行本101巻のSBSにて、「少しダサいという弱点(ウィークポイント)こそ愛しちゃってるんじゃないですか~?笑」と語っていることもあり、意図的なものだったようだ。

 最後は『遊戯王』の城之内克也による「城之内ファイヤー」で締めくくろう。本来の攻撃名は「ゴーレム・ボルケーノ」だったにもかかわらず、「技名は俺が決める!」と息巻いた結果、生まれた伝説の技名である。

 名前の半分が“自分の名前”というこの中二感満載のセンスに、緊迫したシーンの空気が一気に崩壊したのは今も語り草だ。しかし一方で、「勢いで叫んだ感じが城之内らしくて好き」と、かっこよさを感じる人がいるのも事実であり、まさに“ダサかっこいい”という言葉がぴったり当てはまる技といえる。

 

 このようにジャンプ作品では、真剣な場面に突如“ダサい技名”が現れることもある。技名のセンスに首をかしげたくなることもあるが、その裏にはキャラの個性や作中の文脈がしっかりと存在しており、単なるネタでは片づけられない魅力があるのも忘れてはならない。

 読者を驚かせ、笑わせ、ときに感動すらさせる必殺技たち──その名前がどんなにダサくても、読者の心にはしっかりと刻まれているのだ。

 今後も、“技名だけでツッコませてくれる”新たな名作が生まれることを期待したい。

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