■大映らしさ全開!どんでん返しの最終回
物語が進むにつれ、雪の身には困難が降りかかる。ターニングポイントは、AB型rhマイナスという雪の血液型と鈴木の血液型が一致し、雪彦の血液型がO型だと判明した物語中盤だ。O型からAB型rhマイナスは生まれない。つまり、雪は雪彦の娘ではなく、鈴木の娘かもしれないという疑惑が浮かび上がったのだ。
ただでさえピアノコンクールで切羽詰まっていた雪は大混乱。川村刑事や一族からは偽物と責められ、さらに辛い状況になっていく。
そして、謎を残したまま迎えた最終回、大どんでん返しが起こる。鈴木は東京地検特捜部の検事だと身分を明かし、川村とともに久之の裏口入学斡旋を秘密裏に捜査していたと語りだすのだ。川村刑事が東一族に入り込んだのも、鈴木が雪彦の血液型を偽ったのも、すべて不正の証拠を掴むための行為。視聴者をも騙す壮大な伏線だったのである。
ならば雪にあそこまで冷たくする必要もなかったのでは……とも思うが、川村刑事は久之逮捕後、これまでのことを雪に謝罪し「元気でな、とってもかわいいシンデレラ」と笑顔で去っていった。それまでの「薄汚ぇシンデレラ」が挽回される最高のセリフだ。
晴れて雪彦の娘と確定した雪はこれまでの努力が実ってコンクールで優勝し、美津子とも和解。亡き母の言葉を胸に未知の世界で戦い抜いた結果、ついに「東雪」の名を手に入れ一流のピアニストを目指して新たな一歩を踏み出すのだった。
これだけならば綺麗なハッピーエンドだが、同作はそれだけでは終わらない。
最後の最後に、ぶつかりあった特待生軍団とお嬢様軍団が和解。そして両者が「野良猫ガッツで頑張ろう! 野良猫ガッツで頑張ろう!」「エレガント! お上品! エレガント! お上品!」とコール合戦を始めるのである。その後のセリフをバックにひたすら続くこのコール&レスポンス。今見るとかなりカオスとも思えるインパクト抜群のエンディングシーンだが、他のドラマでは実現できないであろうこの演出こそが同作の醍醐味かもしれない。
今回の記事執筆にあたりDVDをレンタルし、久々に視聴したが、笑っているシーンも怒っているシーンも、とにかく終始キョンキョンがかわいい。こんな学生がいたら、誰でも応援したくなってしまう。
また、大げさな演出とドラマチックな展開、クセの強いセリフの数々。大映ドラマならではともいえるこれらの要素により、同作は今見ても色褪せない輝きを放つ名作となっている。今の時代とは空気感こそ違うかもしれないが、サブスク配信などあれば嬉しいものだ。


