■約700画面分の途方もない旅路…『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』

 最後は、1986年にバップから発売したアクションRPG『元祖西遊記スーパーモンキー大冒険』を紹介したい。ストーリーは言わずもがな、中国の三蔵法師が孫悟空ら仲間とともに天竺を目指すという、まさしく『西遊記』が舞台のゲームだ。

 さっそくスタートすると、ドット絵の広大な荒野にポツンと立つ三蔵法師と孫悟空らしきキャラクターを動かせるようになる。ここで多くのプレイヤーは「何をしたらいいの?」と次の行動に迷ってしまうと思うが、本作に目先の目的などはいっさいない。ただ、どこかにある天竺を目指すのみなのである。

 説明書にはスタート地点を含むさまざまな土地があることが記載されており、各地に存在するワープ地点を使って土地から土地へと旅をする。しかしこのワープ地点には特別な目印はなく、ゲーム上のとある地点になぜか隠されているのである。この見えないワープ地点探しによって、プレイヤーは何時間も同じ景色を練り歩くことになってしまうのだ。

 そして本作の恐ろしい点は、その無機質なドット絵の世界がおよそ700画面分の広さであるということだ。当時のプレイヤーはその広さを数値上で知ることはなかったが、知らないことがもはや救いに思えてしまうほどに広大なのである。

 敵との戦闘、仲間の獲得、水や食料などさらなる要素もあるにはあるが、何をするにもまずは「移動」という単調な操作がメインとなる本作。あてもなくただコントローラーの十字ボタンを押すだけというこのゲーム性は、もはやゲーム内のバグを探すデバッグ作業のようである。

 とはいえ理不尽に複雑な操作を強いられるわけではないため、根気強いプレイの果てにいつかは天竺に辿り着くことができるだろう。目的に向かって黙々とプレイする「作業ゲー」が好きな人には、案外好まれる作品なのかもしれない。

 

 説明不足ゆえ冒頭から行き詰まってしまうこれらの理不尽なゲームたちは、時に「クソゲー」というレッテルを貼られることが多かった。

 しかし、『星をみるひと』のリメイク版において、遊びやすさは向上したものの難易度自体が変更されることはなかったことから、現代では「理不尽」の中に「楽しさ」を見出す一定の層がいるということがうかがえる。

 そんな理不尽さを体験してみたい人は、ぜひともプレイしてみてはいかがだろうか?

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