■『失恋ショコラティエ』の一途な好青年役
水城せとなさんの『失恋ショコラティエ』を原作とする実写ドラマは、2014年にフジテレビ系列にて放送された。ヒロイン役の石原さとみさんの強烈な小悪魔キャラも記憶に刻まれている人気作である。
松本さん演じる小動爽太は「ショコラ・ヴィ」のオーナーショコラティエであり、長年、石原さん演じる高橋紗絵子に想いを寄せる純粋な好青年である。「負け主人公」ともいえるキャラであり、想い人が既婚者になってしまった現実に戸惑いつつも、一途な想いと情熱を武器に突き進んでいく。
中でも第2話の爽太の「悪い男」宣言は、名シーンのひとつだ。最強の小悪魔である紗絵子をあきらめきれない爽太は、いままでの自分は純粋すぎたと反省する。
そして、「なんていうかな、俺はもっと……悪い男にならなきゃいけないんだよ」と宣言するのだ。この時の爽太の真剣な表情と小悪魔的な宣言は、思わず見とれてしまうほどに美しい。
そうは言いつつ全然上手くいかない不器用さと、愛を伝えるためにチョコレートを作り続ける誠実さが爽太の魅力。「悪い男にならなきゃいけない」と宣言してしまうようでは「悪い男」にはなれない気がするが、そんなセリフをまっすぐなまなざしで言ってしまうところが彼らしくもある。
甘いチョコレートとビターな恋愛が重ね合わされ、「負け主人公」が愛のために最高のチョコレートを作り続ける姿が最高に「甘い」ドラマだった。
松本さんは『花より男子』の道明寺のイメージが強く、ドS男子がハマリ役と思っている人も多いかもしれない。しかし、『きみはペット』では可愛い系男子、『失恋ショコラティエ』では純粋な愛を信じるショコラティエと、幅広いキャラクターを演じてきた。
若い頃から数多くの胸キュン名シーンを生み出してきた松本さん。大河ドラマの主演や海外での舞台なども経験した松本さんがどんな演技を見せてくれるのか、今後も楽しみでならない。