■改めてすごい「トリック」とゾクっとするホラー描写

 また、同作を語るうえで欠かせないのがトリックとホラー演出の数々だ。

 それぞれのエピソードには、「マイクロ波発生振動銃」「超低周波発生装置」といった、おおよそ一般人は手に入らないアイテムを使ったぶっ飛びトリックが登場する。これも金狼への伏線であるものの、あまりにも斬新だ。もはや普通に殺害したほうが早い気もしたが……、この過激さとトリッキーさが最大の魅力だった。

 銀狼は、そんな巧妙なトリックを「なるほどね……」と冷静に解く。だが、裏で手を引く金狼の手腕もあり、1回は推理をミスってしまうのが定番の流れである。

 そして、ホラー演出も見どころのひとつだ。事件数は多くないのに、当時の視聴者からはいまだに「銀狼は怖かった」という声が上がる。それだけトラウマを植え付けられたからだろう。

 たとえば、冒頭で触れた銀狼覚醒のきっかけでもある「首なしライダー」。事件は友人の赤間良が、いじめ軍団の張ったピアノ線に引っ掛かり首を切断されるところから始まる。その後、いじめ軍団の一人が白いライダースーツの首なしライダーに、ピアノ線で首を切断されてしまう。このときの、広場の木の上にぶら下げられた彼の首と滴り落ちる血が当時は恐ろしく見えたものだ。

 銀狼が暴いたトリックは蛍光塗料とガラスビーズで明暗差をつけて首なしに見せるもの(ブラックマジック)だが、なぜか首が見える人もいて失敗。とはいえ実は半分正解で、真相は生徒たちにサブリミナル映画を見せることで洗脳し、首無しに見せたというものだった。首が見える人は、映画を見ていないというわけだが、同作はこの話で視聴者の心を掴むことに成功したと言えるだろう。

 また、怖さでいえば「破壊の死神」もインパクトが強い。これは、画家・鴻神十三が描いた「破壊の死神」の絵がポルターガイストを引き起こし、さらには死神が殺人をするという事件のこと。恐ろしいのは何と言っても死神のビジュアルだ。鎌を持った骸骨が絵から出てきて襲い掛かる様は、もはやホラー。映像が薄暗いために余計恐ろしい。

 このトリックは、超低周波発生装置でポルターガイストを起こし、ホログラムで通路に壁を浮かばせて“死神の壁抜け”を見せるというものだった。一歩間違えれば即バレそうだが、こんなトリックもまた面白い。

 今になって見直すとツッコミどころもあるが、それ以上に色褪せない輝きを放っているのが『銀狼怪奇ファイル』というドラマだ。「怖いけど面白い」という当時のワクワク感は、永遠に忘れることがないだろう。

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