
名作ドラマが次々と生まれた90年代。当時の視聴者たちにとっては、それぞれに思い出深い作品があることだろう。しかし、令和になって改めて視聴したいと思うものの、再放送はおろかDVD化もされずこの先も視聴困難が予想される作品がある。
たとえば、1996年1月から日本テレビ系「土曜グランド劇場」枠で放送された『銀狼怪奇ファイル〜二つの頭脳を持つ少年〜』もそうした名作ドラマのひとつだ。オカルト事件を科学的に解明する斬新な設定とトラウマ級の恐怖描写で視聴者の心を掴んだ同作は、平均視聴率20%の大ヒットを記録。主演の堂本光一さんにとって、代表作の一つとなった。今回は、そんな『銀狼怪奇ファイル』を振り返ってみよう。
※本記事は作品の内容を含みます
■終盤に明かされる衝撃の真実!練られたドラマ性も見どころ
同作は、金成陽三郎氏の漫画『超頭脳シルバーウルフ』を原作にしたドラマだ。ただ、同じなのはキャラ設定ぐらいで、あらすじはほぼオリジナルである。事件と解決の2話で1つの物語となっており、全5エピソードが放送された。
主人公は、堂本さん演じる不破耕助なる平凡な高校生。彼は両親を亡くして以来、父の友人である小早川順三郎宅で娘・冴子(宝生舞さん)と兄妹のように育てられてきた。だが天神学園に入学したあるとき、耕助は友人の赤間良(志萱一馬さん)とともにイジメられていた薬師寺力(三宅健さん)を助けようとして事件に巻き込まれ、バイク事故によって心肺停止になってしまう。
その瞬間、別人格の「銀狼」が目覚める。
穏やかな性格で特に取り柄のない耕助とは違い、銀狼は「IQ220の天才」「運動神経抜群」「クール」という個性的な人物。髪は銀色で目はブルーグレーという外見からして別人だ。
この新たな人格は、かつて父・不破俊助が耕助に遺伝子操作をしたことで生まれたもの。以来耕助は頭蓋骨内に2つの脳を持って生きてきたが、事故により11年振りに銀狼が覚醒したのである。こう連ねるだけで何やら先の展開が気になってしまう、異例の設定を持った主人公ではないか。
銀狼覚醒後、天神学園では不可解なオカルト殺人事件が起こり始める。耕助は、ピンチになると現れる銀狼の天才的な推理によって次々と事件を解決に導いていくのだった。
後半はストーリー性が深まり、一連の事件を裏で操る人物が浮かび上がっていく。最終エピソードでは、ついに銀狼の異母兄弟である黒幕・金狼が登場。銀狼に殺人ゲームの予告状を送りつけ最終対決へ突入する。
金狼の正体は友人である薬師寺力だった。銀狼同様、俊助に生み出された彼は、超天才なのだが感情が欠落していて残虐性が高い。そのせいで孤独な人生を送ってきた金狼は耕助を恨み、復讐していたのだ。
いじめられっ子の薬師寺がラスボスという展開は視聴者を驚かせたが、今振り返ると自分の子どもたちの遺伝子をいじる父親がクレイジーすぎて驚くとともに、金狼の辛い半生に同情してしまうラストだった。
■美男美女揃いの天神学園のキャストたち
KinKi Kidsとして活躍しながら、俳優業にも力を入れていた90年代の堂本光一さん。堂本剛さんとの初共演作『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS系)や、大ヒットドラマの続編『家なき子2』(日本テレビ系)などでも大きな存在感を放っていた。『銀狼怪奇ファイル』は、そんな光一さんが単独初主演を果たした記念すべき作品だ。
作中では一人二役に挑戦。耕助のおちゃらけた雰囲気と、「俺に不可能はない!」の決めセリフでクールに事件を解決する銀狼のギャップはカッコよく、女子視聴者は大いに胸を昂らせたことだろう。
1995年から99年あたりの日テレ「土9」は、“ジャニーズ枠”と言っても過言ではないほどアイドルが多く出演していたが、同作も同様で、キャスト陣には三宅健さん、井ノ原快彦さん、秋山純さんと華やかな名前が並ぶ。特にV6の2人は、1995年にCDデビューしたばかりで注目度が高かった。
ラスボスを演じた三宅さんは、後にYouTubeチャンネルで同作を「リベンジしたいドラマ」として挙げ、「毎日緊張してたし、演技経験がないからスティック読み(棒読み)だった」と笑いを誘っていた。ちなみに、難しかったのは“高笑い”だそう。
女性キャストでは、宝生舞さんが印象に残っているというファンは多いだろう。
今回、振り返ってみて改めて感じたが、当時の宝生さんは驚くほど美しい。パッツン前髪×ロングヘア×リボンがあそこまでハマる人は令和にもいるだろうか。耕助のために命の危険を顧みず彼を助けにいく姿も感動的で、彼女がいたから作品が引き締まった一面もあるように感じた。
さらに、転校生の吉川麗子役の中山エミリさんや新聞部部長の鏡遥役の木村佳乃さんといった美女も出演し、作品に華を添えている。天神学園は殺人事件だらけで怖いが、イケメン&美女揃いすぎてちょっと通ってみたい気もする。