
ゲームにおけるラストバトルは物語のクライマックスであり、プレイヤーの記憶に深く刻まれる瞬間だ。
1990年にファミコンの次世代機としてスーパーファミコンが発売され、その表現力の進化に子どもたちは驚いた。そして、ハードの進化によってラスボス戦のドラマ性も格段に向上し、ファミコン時代にもあったボスが形態を変えながら襲いかかる演出はさらに激化。加えて、仲間たちとの共闘を実感できる仕掛け、BGMとシンクロした演出なども盛り込まれ、プレイヤーを熱くさせるドラマチックな工夫が随所に散りばめられるようになった。
今回は、そんなスーパーファミコン時代の名作RPGのラストバトルに注目したい。
※本記事には、『ファイナルファンタジーVI』『MOTHER2 ギーグの逆襲』『ロマンシング サ・ガ3』各作品の内容を含みます
■ラストバトルで全員が終結、『FF6』のラストバトル
ファミコン用ソフト『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』(エニックス)のように、ラスボスが第2形態、第3形態へと変化し、攻撃パターンを変化させるRPGは決して珍しくない。だが、ファミコン時代はまだ数少なく、スーパーファミコンになって特に顕著になったといえる。中でもスーファミ時代の『ファイナルファンタジー』シリーズ(スクウェア)のラスボスの形態変化はその演出面も含めてかなり印象的なものだった。
1994年に発売された『ファイナルファンタジーVI』(スクウェア)では、戦闘に参加するのは4人。だが、幻獣と人間のハーフであるティナや、トレジャーハンターを名乗り盗みを得意とするロックなど、主人公キャラクターが14人もおり、その都度パーティを組み換えて冒険するスタイルのRPGだった。
そんな主人公たちの前に立ちはだかるのがラスボスの魔導師・ケフカ。彼はガストラ皇帝の部下であったが、実験によって魔導の力を注入され凶暴化していく。そして彼はガストラ皇帝を裏切り、伝説の三闘神の力を吸収し、強大な力を手に入れてしまうのだ。
そのラスボスのケフカが陣取るラストダンジョンは複雑で、パーティを3つに分けて様々な仕掛けをクリアしながら進んでいく必要があり、ラストバトルは最大12人の仲間キャラが終結する形となる。
そしてこのバトルは、筋肉質の人間や怪物、神様のような様々なキャラクターが合体したような敵との戦いから始まり、それが合計3段階ある。各段階のボスキャラを倒した時点で戦闘不能になっているキャラクターは戦線離脱となり、次の段階から控えのキャラクターに交代となる。
12人で戦えるため有利かと思いきや、即死攻撃を行ってきたり、大ダメージをくらう10回連続攻撃「10れんだ」を繰り出したりと、こちらを殺る気マンマン。初見での対戦では犠牲者が出てしまうことだろう。
そして3段階のボスキャラを倒した後にラスボスのケフカと対峙することになる。ここまでの長い道のりを12人の仲間のメンバーで力を合わせて戦うというスタイルは本当に胸熱だった。
『FF』シリーズは他の作品もラストバトルが印象的で、『ファイナルファンタジーIV』のラスボスは『FF』のメインテーマをバックに戦闘に突入する演出が盛り込まれており、ハードの進化によってさらなる感動を子どもたちに与えた作品でもあった。
■これまでに出会った仲間とともに戦う『MOTHER2 ギーグの逆襲』
ラストバトルで特に感動的な演出が盛り込まれたスーファミRPGといえば、『MOTHER2 ギーグの逆襲』(任天堂)がはずせないだろう。
同作は、ある日不思議な司令を受けた主人公・ネスが大冒険に出かける物語で、4人の少年少女が世界を支配しようとするギーグの陰謀を阻止すべく旅立つ。そして最終的にギーグは、過去の世界から現代の世界を攻撃しているということがわかるのだ。
ラストに向けてネスたちは魂だけを入れたロボットの姿となり、タイムマシンに乗り込みギーグのもとへ向かうが、ラストダンジョンで待ち受けていたのは、「悪そのもの」となってしまった異形の姿のギーグだった。
このラストバトルは、他RPGとは一線を画す不気味さ。BGMは音楽というよりは不協和音のような感じで、いくら攻撃してギーグにダメージを与えても倒すことはできない。そしてギーグからは、正体がつかめない攻撃が繰り出され、混乱させられたり、いきなり戦闘不能状態になったりする。
このギーグを倒すために必要なのは、少女・ポーラにあらかじめ用意されていた固有コマンド「いのる」。これは『ドラクエ』シリーズにおける「パルプンテ」のようにランダムな効果を与えるもので、これまでの通常バトルではさほど役に立たなかった。だが、ギーグ戦でポーラが「いのる」を使うことで、これまでにネスたちが旅の途中で出会ってきたさまざまな人たちにテレパシーで地球の危機を伝え、ともにいのってもらうことができるのだ。それによりギーグのディフェンスが不安定になり、いのりを重ねるごとに大ダメージを与えていく。
だが、いのりを重ねてもなかなかギーグは倒れない。そして、ついにネスたちもこれ以上助けてくれる人の名前が誰も思い浮かばなくなってしまう。万事休すかと思ったときに、最後に1人の人物にいのりが届く。それはなんとこれまでこのゲームをプレイしてきたプレイヤー自身だったのだ。ゲーム内でプレイヤーの名前を入力する箇所があり、それがこのラストバトルに使われる。
プレイヤー自身がいのり続け、1万を超える大ダメージを与え、ギーグを撃破するシーンは感動必至。ファミコンで発売された前作『MOTHER』も歌を歌うことでラスボスを倒すという特殊な戦いだったが、本作は「いのる」ことでラスボスを撃破する。そして最後はプレイヤー自身の力で世界を救うのである。