■神曲とマッチした戦闘開始演出に心躍った『ロマンシングサ・ガ3』

 ラスボス戦のBGMによる演出が特に印象深いのが『ロマンシング サ・ガ3』(スクウェア)である。

 同作は、美人ながら男勝りなエレン、ロアーヌ侯爵であるミカエルら8人の個性的なキャラクターの中から誰か一人を主人公に選び、世界を救う旅に出る物語を描く。舞台となるのは、300年周期で起こる「死食」により、その年に生まれた命がすべて失われるという世界。600年前は魔王が1人生き残り、300年前は聖王が1人生き残ったと言われており、物語の終盤で、主人公キャラの1人・サラともう1人「少年」としか明かされていない人物が、今回の死食で生き残った2人だったことが分かるのだ。

 本来1人しか生き残らないはずが2人生き残ったことにより、その力が暴走し、「破壊するもの」という形をとってラスボスとして主人公たちに襲い掛かってくる。

 『ロマサガ』シリーズはスーファミで3作リリースされたが、特にこの『3』のラストバトルの演出はとにかくドラマチック。

 直前に6人(場合によっては5人以下のこともある)のメンバーがそれぞれセリフを一言ずつ発し、戦闘に入る。そして、通常の戦闘時では、すでに陣形ができあがった段階から戦闘開始となるが、ラストバトルではパーティメンバーが右端から走って姿を現し、陣形を形作っていくのだ。

 また、ラストバトルはイントロ箇所が「魔王殿」で流れるBGMをアレンジした曲が採用されており、物語が聖王と魔王に絡んだストーリーであることを再認識させてくれる。「神曲」とも称されるシリーズ屈指の名曲だ。

 そのイントロとその動きが絶妙にシンクロしており、陣形を作り終わってラスボスが姿を現す。そしてイントロが終わると同時に戦闘のコマンド入力開始となるのだ。曲の美しさはもちろん、1戦だけに特別に演出が用意されるというスーファミのスペックだからこそ実現できたバトル表現だろう。

 ゲームの技術が進歩した現在ではもっといろいろな演出や表現が可能になっており、これらの演出を超えるラストバトルもたくさんあるかもしれない。だがやはり、それまで見たことがないような凝った演出を初めて体験したという意味でも、スーパーファミコン時代のラストバトルの演出はとりわけ印象に残っているといえるだろう。

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