■ハラハラする恋愛模様、ラスト主人公に降りかかる不幸な展開も話題に

 大映ドラマといえば、なんといってもヒロインの恋愛模様が見どころだ。目が離せない展開が多く、本作も未記の恋の行方にハラハラさせられた。

 未記を巡っては、キーボードの晃とベースの邦夫がライバル関係に。当初、邦夫は女性のことを軽視する嫌なキャラだったが、終盤では自らを省みるようになる。そして最終的には晃に未記を譲るといった、“大映ドラマあるある”の良いキャラに変身した。

 また本作には大人雰囲気漂うカップルも多く登場し、ベースの坂上忍さん演じる牧村稔&片平なぎささん演じる矢崎妙子との不倫関係や、サックスの国広富之さん演じる霧島航&岡田奈々さん演じる千葉かおるとの関係も見逃せなかった。

 そして“大映ドラマあるある”といえば、ヒロインに降りかかる終盤の不幸な展開……。なんと未記はギターの弦が切れたことで、両目にダメージを負ってしまうのだ。それでもこれまでの努力が実を結び、最後は見えないながらもスティックを握りしめ、力強いドラム演奏で感動的なクライマックスを迎えるのである。

 この未記の事故をはじめ、ほかにも晃の妹が病気で倒れたり、バンドメンバーが暴力団に襲われたりと、不幸な展開がこれでもかと続く本作。普通ならまずあり得ないようなシーンも多いのだが、そんな嵐のようなストーリーだからこそ面白く、キャラクターたちの転落や葛藤、成長に視聴者は惹きつけられたのだ。

 

 大映ドラマならではの劇場展開と、数々の名セリフを残した『ポニーテールはふり向かない』。振り返ってみると80年代のドラマのなかでもツッコミどころ満載であったように思うが、それでも伊藤さんが美しいポニーテールをなびかせながら、敵をドラムスティックでなぎ倒し、力強いドラム演奏をする姿はただただカッコよかった。

 ちなみに伊藤さんは、自身のYouTubeチャンネルにて当時を振り返っており、撮影1か月前からドラム練習のために六本木に通ったり、撮影の合間の昼休みなどに稽古に励んだことを明かしている。

 その徹底的な役作りがあってこそ、この熱いドラマが生まれたのだろう。突拍子もない展開や独特なセリフも、まったく違和感なく楽しめて素晴らしかった。

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