80年代大映ドラマの王道!伊藤かずえ主演『ポニーテールはふり向かない』忘れられない「強烈セリフ」と「ドラムスティック」の画像
『ポニーテールはふり向かない』大映テレビ/TBS(TBSチャンネル公式サイトより)

 昭和に大流行した「大映ドラマ」。さまざまな作品が放送されたが、なかでも80年代のヒロインといえば、伊藤かずえさんのインパクトが強い。

 伊藤さんは『不良少女とよばれて』や『スクール☆ウォーズ』といった作品にも登場していたが、とくに印象深いのがドラムスティックを手に活躍する『ポニーテールはふり向かない』である。

 原作は1984年に発行された喜多嶋隆さんの小説『ポニー・テールは、ふり向かない』。その人気からシリーズ化もされ、翌年1985年にドラマ化された名作だ。

 本ドラマでは、日常生活でなかなか口にする機会がないインパクトのあるセリフも次々に飛び出した。ここではそんな特徴的なセリフとともに、本作の魅力を振り返りたい。

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます

■大映ドラマ初主演の作品! ドラムは実際に演奏していた

 『ポニーテールはふり向かない』は、伊藤さんの初主演作品だ。それまでも多くの大映ドラマに出演していた伊藤さんだが、主人公に嫌がらせをするようなちょっと意地悪な役が多かった。しかしその美貌や演技力が高く評価され、本作では満を持してヒロインに抜擢されている。

 あらすじはこうだ。伊藤さん演じる麻生未記は、子どもの頃から名ドラマーの父からドラムを教わり、技術を磨いていた。しかし、貧困の末に母は家出。未記は非行に走り、少年院送りとなってしまう。

 出所後に父が亡くなり、絶望のなかで再び不良の道に戻ろうとする未記。だが、音楽だけが自分の支えであることに気づき、ライブハウスのボーイ・田丸晃(松村雄基さん)や医大生の名倉邦男(鶴見辰吾さん)とともに、世界に通用するロックバンドを目指していく……という物語だ。

 本作で伊藤さんは、なんと自らドラムを演奏している。片手でスティックを華麗に回し、曲に合わせてドラムを叩く姿は、まさに本物のドラマーそのものだった。また、その一方、スティックを両手に構え、襲いかかる不良たちを次々となぎ倒す乱闘シーンでのアクションも圧巻だった。

 バイクで襲いかかる不良をドラムスティックで撃退し、さらには大爆発が起こるなど、現実では考えられない展開が次々と繰り広げられるのも印象的で、今となってはその荒唐無稽ぶりも楽しく懐かしい。

■「脳みそスパゲティになっちゃってるのか?」突拍子もないセリフも話題に

 『ポニーテールはふり向かない』といえば、登場するセリフもインパクトがあった。

 たとえば、米軍基地のバンドに属するジム・パーカー(ケント・ギルバートさん)のピアノを称賛した未記に対し、晃は「脳みそスパゲティになっちゃってるのか?」と、ケチをつける。ちょっと意味は分からないが、強烈なインパクトのあるセリフだ。

 また、野々村真さん(当時は野々村誠)演じるドラムメンバーのボーカル・脇田克己は「俺はこのハチミツみたいな甘いマスクとボイスで、ライブでの人気はちょっとしたもんだった」というセリフを口にする。だが、ヤクザ組織の娘である恋人・みちこの親族に襲われそうになった際には「顔だけは! 顔だけは殴らないでくれ!」と、懇願する場面も。実際、甘いマスクの野々村さんが発するからこそハマっていたセリフだった。

 このほかにも元カノに付きまとわれた鶴見さん演じる邦夫が「僕は君にはもう蚊の死骸ほどの愛情も持ってない」と言うなど、とにかく独特で軽妙なセリフが多い本作。

 令和になった今では書道を得意とする伊藤さんがこれら名セリフを半紙に書いてSNSに投稿するなど、たびたび話題になっている。主役だけではなく、脇を固めるキャラクターたちのセリフまで練り込まれていたのも、大映ドラマならではの魅力だったように思う。

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