
テレビアニメ『機動戦士ガンダムZZ』は、前作『機動戦士Zガンダム』の続編として1986年3月から放送が開始された宇宙世紀シリーズのひとつ。
同作の特徴は、富野由悠季監督が『機動戦士ガンダム大全集』(講談社)などのインタビューで「ユーモア作品の作りを若いスタッフに教えるために作った」と語っているように、終始シリアスだった前作から打って変わってコミカル路線を強調して描かれているところだ。
主人公のジュドー・アーシタは、学校へ行かず同年代の仲間たちとともにシャングリラでジャンク屋として生計を立てている14歳の少年。神経質なところが多かった前作のカミーユ・ビダンとは違い、底抜けに明るい性格の持ち主だ。
『ZZ』の序盤は1話完結のコミカルな展開が続く。ジュドーのキャラに合わせるかのように、敵であるアクシズの軍人たちもどこかコミカル。間の抜けたシーンも多数あり、他の宇宙世紀シリーズの敵キャラたちと比べて好感が持てる人物が多かったのではないか。
だが中盤以降、戦いが激化し展開がシリアスになっていくにつれ、キャラクターの運命も変わっていく。そしてコミカルで憎めない彼らが悲劇的な最期を迎えるシーンも少なくなかった。
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■ハマーンとバラを愛する、マシュマー・セロ
たとえば、ジュドーたちの前に最初に敵として立ちはだかったマシュマー・セロも、イメージにない衝撃的な最期を迎えたキャラのひとりだ。
彼は、ネオ・ジオンの指導者ハマーン・カーンを崇拝し、彼女から賜ったバラの花を大事に持ち歩く巡洋艦・エンドラの指揮官。イケメンではあるものの、あまりにハマーンを慕いすぎるため、初登場時から三枚目的なイメージが強かったキャラクターだ。
卑怯な戦い方を嫌う騎士道精神の持ち主であるものの、それが空回りしていつもジュドーにやられてしまう。そしてその責任を問われ、エンドラの艦長の座を後述のキャラ・スーンに譲る形で退場してしまうのだった。
だが、そのままフェードアウトするかと思いきや、マシュマーは手術を受けた強化人間として再登場する。ハマーンに対する忠誠心はそのままではあるものの、かつての騎士道精神はどこへやら、冷酷な指揮官としてジュドーらの前に現れたのだ。
彼は最終決戦直前で、エゥーゴと反乱軍との三つ巴の戦いで、ザクIII改に乗って出撃し、反乱軍のプルツーが操縦するクイン・マンサと互角の戦いを演じる。だが、そこで油断したのかラカン・ダカランのドーベン・ウルフ隊の奇襲を受け、電流攻撃を喰らう。
そして、「私はやられんぞ! このマシュマー・セロ、己の肉が骨から削ぎ取れるまで戦う! ハマーン様、バンザーイ!」と絶叫し、ドーベン・ウルフ1機を巻き込んで爆死することとなる。
このときの鬼神のごとき戦いぶりと衝撃的な最期は、序盤のコミカルなマシュマーからは想像もつかないシーンだった。