■マシュマー、キャラという2人の変人に仕えた副官ゴットン・ゴー
前述した2人の指揮官に仕えていたゴットン・ゴーは、コミカルな『ZZ』におけるツッコミ役のようなキャラクターだった。
非常にクセの強い上司たちに振り回されるような場面が多かったことで苦労人としてのイメージが強いゴットンだが、2人の退場後はエンドラを指揮する立場となり、月面基地グラナダに寄港したアーガマの破壊工作を企てる。
その破壊工作とは、スパイとして働かせていた民間人のセシリアを騙し、爆弾入りのアタッシュケースを持たせ移民船に乗せるというもの。その船をモビルスーツで誘導し、アーガマの上空で爆発させる計画だった。
民間人を犠牲にする、マシュマーとキャラの下にいたときのコミカル路線から考えるとかなり冷酷で狡猾な作戦。だが、不審に思ったセシリアに爆弾入りではないかと気づかれ失敗してしまう。
セシリアは宇宙服に身を包み船外に出て、時限爆弾ごとアクシズのモビルスーツに取りつくことでアーガマと、家族の乗る移民船を守ろうとする。そしてゴットンはそれに気づかず、自らが乗っていた艦船に帰還したモビルスーツごとセシリアの抱えた爆弾の爆発に巻き込まれて戦死してしまう。
このエピソードが描かれたのは物語中盤にあたる第20話「泣き虫セシリア(前)」および第21「泣き虫セシリア(後)」。ゴットンはグラナダの町に一般人として潜んでいるにもかかわらず敬礼する部下をぶん殴るシーンがあったり、動きも変わらずコミカルに描かれていた。だが、セシリアを利用し戦果を挙げようと企む冷徹な軍人であり、最後は無惨に散っていった。『ZZ』のコミカルとシリアスの境を分ける重要なキャラのひとりだろう。
マシュマー、キャラ、ゴットンといった憎めない敵キャラクターたちは、コミカルな面を持ちながらも戦争の現実に飲み込まれ、壮絶な最期を遂げていく。彼らの存在は、『ZZ』が単なる明るい作品ではなく、戦争の過酷さを描いたガンダムシリーズの一部であることを改めて思い出させてくれる。