「大人になるとますます響く…」『機動戦士ガンダム』スレッガー・ロウが遺した言葉と生き様の「重み」の画像
DVD劇場版『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編/特別版』(バンダイビジュアル)©創通エージェンシー・サンライズ

 『機動戦士ガンダム』に登場する伊達男、スレッガー・ロウ。彼の言葉の数々は、子どもの頃には完全に理解しきれなかったものの、どこか“大人の色気”を感じさせるものだった。

 時に女性を口説くようなセリフを口にしながら、戦場では命を懸けて戦う……そんな彼の生きざまは、大人になった今だからこそ胸に響くものがある。

 今回は、スレッガーの“痺れる”名セリフから彼の生き様を振り返っていきたい。

※本記事には作品の内容を含みます

■熱い一面を見せた…「この人は本気なんだよ!」

 まずは、第34話「宿命の出会い」のエピソードにて。

 中立地帯であるサイド6を出港するホワイトベース。しかし、そのサイド6の領空外にはジオン軍のコンスコン隊が待ち構えていた。

 そんななか、サイド6の監察官であり、ミライ・ヤシマの元婚約者でもあるカムラン・ブルームが、自家用船でホワイトベースを先導し盾になることを申し出る。ジオン軍も中立地帯の民間機をむやみに攻撃するわけにはいかないが、それでも戦時下では予測不能。まさにミライのための命がけの行動だった。

 しかし、そのカムランの申し出に、彼と距離を置きたいミライは「よけいなことをしないで」と言い放ち、申し出を突っぱねる。2人は言い争いになり、ブリッジのクルーたちも口を挟むことができず、気まずい空気が漂い始めてしまう。

 それを一変させたのがスレッガーだった。突如、ミライに駆け寄り「バカ野郎!」と思い切り平手打ちすると「この人は本気なんだよ 分かる?」と、カムランの気持ちを代弁するようにミライに詰め寄る。

 そしてその勢いは収まらず、矛先はカムランにも。“殴らなくても話せば分かる”という彼に対し、スレッガーは「本気なら殴れるはずだ」と言い放つのだった。

 カムランの申し出には少なからず私情も含まれていたかもしれないが、それでもミライのための命がけの行動だったのは確かだ。スレッガーはそれを誰よりも理解し、少々荒っぽい手段を取ってでも、ミライに気づかせようとしたのだろう。

 初登場から調子のいいことばかり言っていたスレッガーが一転してみせた、その熱い姿に多くの視聴者が衝撃を受けたことだろう。

■経験ゆえの言葉…「今の自分の気持ちをあんまり本気にしないほうがいい」

 第36話「恐怖!機動ビグ・ザム」でのこと。

 宇宙要塞ソロモン攻略の激戦のなか、スレッガーのGファイターは被弾してしまい、一時帰還を余儀なくされる。整備のあいだ、待機ボックスでハンバーガーを頬張る彼のもとに現れたのは、ブライトから許可を得て来たミライだった。

 「ケガはないようね」と、彼の無事を確かめて安堵するミライ。彼への想いを自覚し始めた彼女はあふれんばかりの感情を抑えきれず「よかった」と、涙してしまう。

 しかし、ここでスレッガーは彼女の気持ちをすぐに察し、「少尉 やめましょうや うかつですぜ」と、18歳の感情を軽くいなしてみせるのだ。

 それでも真剣な表情のミライに「人間若い時はいろんなことがあるけど 今の自分の気持ちをあんまり本気にしないほうがいい」と伝える。だが、そのあと彼女の本気に応えるかのように“おふくろの形見”と指輪を渡し、そっとキスをするのだった。

 このときのキスはハンバーガーの味だったに違いない……。さすがは伊達男のスレッガー、経験の豊富さから来る大人の余裕が感じられるシーンである。

 だが、ここで疑問が生じる。スレッガーがミライに渡した指輪は本当に“母親の形見”だったのだろうか。実は、その答えともとれる一場面が、スピンオフ漫画『機動戦士ガンダム デイアフタートゥモロー カイ・シデンのメモリーより』(角川コミックス・エース)にて描かれている。

 そこではなんと、“女性を口説くときに「母親の形見」と嘘をついて指輪を渡す”と、アムロやカイなど若い男連中に語るスレッガーの姿があった。

 もし彼が生還していたらミライに真実を打ち明け、いつものように笑い飛ばしていたのだろうか。それとも、彼女だけには本当の気持ちを伝えていたのか……いろいろ想像が広がってしまう。

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