■なぜ「ソロモンの悪夢」と呼ばれるようになったのか

 OVA『機動戦士ガンダム0083 STAR DUST MEMORY』に登場するジオン軍の残党「アナベル・ガトー」は、連邦軍の士官学校の教科書に「ソロモンの悪夢」の二つ名で紹介されるほどのエースパイロットである。しかし、その二つ名がついた一年戦争時のソロモンでの活躍ぶりは、映像作品のなかでは紹介されていない。

 『機動戦士ガンダム公式百科事典』(講談社)によれば、ソロモン要塞を巡る戦いで地球連邦軍の勝利が確実になったあと、ガトーは「リック・ドム」に乗ってジオン軍の撤退を援護したと記されている。

 友軍がア・バオア・クー方面に撤退するしんがりを務めたガトーは、本来優勢なはずの地球連邦軍に甚大な被害をもたらし、8隻の戦艦を沈めたともいわれている。勝利の勢いのまま追撃戦に臨んだ連邦兵にとっては、まさに「悪夢」だったことだろう。

 なお、ガトーは一年戦争における最終決戦となった「宇宙要塞ア・バオア・クー」を巡る戦いでも活躍。緑と青のパーソナルカラーに塗られた新型モビルスーツ「ゲルググ」に搭乗し、圧倒的に戦況が不利のなか奮闘したとされている。

 だが流れ弾に被弾したガトーはエギーユ・デラーズの乗る艦に着艦し、機体を乗り換えてでも死地を求めたが、デラーズによって引き止められる場面が『0083』に描かれていた。


 このように一年戦争時に大きな功績を挙げながらも、アニメ本編にその描写がなかったジオン軍の英雄たちを振り返ってみた。アニメ『ORIGIN』に描かれた「黒い三連星」のルウム戦役のように、ほかの2名の活躍シーンもいつか別の映像作品で観てみたいものだ。

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