
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』は、いわゆる「一年戦争」と呼ばれる地球連邦軍とジオン公国軍の戦いが描かれている。ガンダムに乗る主人公「アムロ・レイ」は、宿命のライバルとなる「シャア・アズナブル」をはじめとした、さまざまな強敵たちと戦い、最終的には連邦の勝利で終わった。
しかし、そういったジオン公国のパイロットたちの動向は、本編アニメ内で描かれなかった部分も多い。あのシャアですら、ガルマ・ザビ戦死の責任をとるために左遷させられたあと、キシリア・ザビ配下となってマッドアングラー隊に着任するまでの期間の詳細はよく分かっていない。
そこで一年戦争で活躍した「ジオン軍の英雄」とも呼ぶべき凄腕パイロットにスポットライトを当て、初代『ガンダム』のアニメでは描写されなかった彼らの知られざる働きや、その功績について深堀りしてみたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■ルウム戦役の英雄であり、まさかの教官役?
アニメ『機動戦士ガンダム』の第24話で初登場した「ガイア」「オルテガ」「マッシュ」という3人のエースパイロットたち。彼らは、通称「黒い三連星」と呼ばれる小隊を組み、ドムに乗って「ジェットストリームアタック」なる戦術を披露した。
彼らの初登場時、連邦軍のレビル将軍から「ルウム戦役で私を捕虜にした兵士たちだ、手強いぞ」と高く評価されている。
この「ルウム戦役」とは宇宙世紀0079年1月に起こった戦いで、初代『ガンダム』の本編には描かれていない(のちに『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で映像化)。
そのルウム戦役で彼らは黒く塗られたザクに乗って活躍。連邦軍の艦隊旗艦「アナンケ」を撃沈し、艦を脱出したレビル将軍を捕虜にするという大きな功績を挙げている。
ちなみに黒い三連星の面々はルウム戦役以後、ホワイトベース隊との戦いまでの動向はあまり知られていない。書籍『機動戦士ガンダム公式百科事典』(講談社)によると、0079年4月、黒い三連星のメンバーは、新兵に対する特別演習を行ったことが記録されている。
ジオン軍もルウム戦役で多くのパイロットを失っており、地球侵攻作戦のためのパイロット育成は急務だったと思われる。そこでルウムの英雄である三連星に白羽の矢が立ったようだが、自軍内で「兵隊やくざ」と呼ばれるほどの荒くれ者である彼らが、どのような“指導”を行ったのか気になるところだ。
■「木星帰り」という多大な功績を残したニュータイプ
アニメ第39話に登場する「シャリア・ブル」は、「木星帰り」のニュータイプである。シャリアは木星船団を率いて、ガンダムの世界の動力源である「核熱融合炉」に必要な資源「ヘリウム3」の採取を行った。その過酷な任務を成功させたことから「木星帰りの男」と呼ばれているのだ。
だが、シャリア・ブルが木星船団を率いた任務の様子は、劇中では一切描かれていない。その道程は片道2年、往復4年もの月日がかかるという過酷なもので、木星の高重力下で任務をこなすには高い能力が求められるという。また、木星の厳しい環境にいたからこそ、シャリアはニュータイプの素養に目覚めたというフラナガン機関の報告もあった。
ちなみに『機動戦士Zガンダム』に登場する「パプテマス・シロッコ」も、やはり同様の任務を成し遂げて「木星帰りの男」と呼ばれていた。
そして木星から戻ったシャリア・ブルを、ジオン総帥の「ギレン・ザビ」が直々に面会していた点からも、いかに大きな功績を挙げたかを物語っている。それほど優秀な人材だっただけに、アムロとの戦いにぶつけてあっさり戦死させてしまったことが惜しまれる。