■王子様の死に多くの女性ファンが悲鳴をあげた!『ロミオの青い空』
最後に紹介するのは、1995年に放送されたシリーズ第21作『ロミオの青い空』。リザ・テツナーの『黒い兄弟』を原作としており、1年間で全33話が放送された。
主人公は11歳の少年・ロミオだ。人身売買人・死神ルイニに故意に山火事を起こされ、父のロベルトが負傷し働けなくなる。治療費を稼ぐため、ロミオは自らルイニに自分のことを売り、煙突掃除の仕事をするためにミラノへ連行されてしまう。
物語の舞台である19世紀半ばのヨーロッパでは石炭や薪を用いる暖炉が一般的だったため、この「煙突掃除人」という職業が盛んであった。細く曲がりくねった煙突を掃除するうえで小さな身体の子どもが重宝されていたようだが、当然危険で過酷な仕事であったという。
煙突掃除人となったロミオを買い取り雇った親方・ロッシと妻のエッダ、息子のアンゼルモはことあるごとに嫌がらせをしたあげく泥棒の濡れ衣も着せたりと、ロミオにつらくあたっていた。きつい仕事をしながらのロッシ親子の攻撃はかなりハードだっただろう。
ところが、ロミオよりもさらに過酷な人生を送るアルフレドが後半で主人公の座を奪う。彼は王子様のような美少年で読み書きができ、知的で聡明。ロミオと永遠の友情を誓う12歳の少年だ。
アルフレドもまた死神ルイニの手で煙突掃除人として売られたあと、自分と同じ境遇の仲間を集めて「黒い兄弟」を結成してからは、カリスマ性を発揮するようになる。
そんな彼の正体は、イタリア貴族マルティーニ家の御曹司であった。両親は叔父夫婦に殺され、妹のビアンカとともに放火の濡れ衣を着せられたうえ、命を狙われ逃亡。農夫のもとに身を寄せる2人だったが、アルフレドがミラノに旅立ったあと、ビアンカは叔父夫婦に見つかり、監視されていた。
アルフレドは仲間の協力で叔父夫婦の悪事を暴き自らの無実を証明するも、煙突掃除で肺結核を患い、第29話で亡くなってしまった。
多くの女性ファンの嘆きからも、叔父夫婦が死神ルイニ以上の悪役に思えたのは間違いない。
今回取り上げた以外にも、『ペリーヌ物語』(1978年放送)に登場するパン屋のマルガレータやバロンを銃で撃ったテオドールはかなりのゲスっぷりを見せていたし、『七つの海のティコ』(1994年放送)のベネックスはシリーズ屈指の悪女で、絶叫しながらの爆死という『世界名作劇場』らしからぬ最期を迎えている。
主人公たちを苦しめ、多くの視聴者に嫌われた彼らだが、その存在は物語を彩るうえで欠かせないものであった。まさに「名悪役」だといえるだろう。