今なら炎上必至!? 『フランダースの犬』に『小公女セーラ』にも…『世界名作劇場』に登場する「ゲスすぎる名悪役」たちの画像
DVD『世界名作劇場』完結版『フランダースの犬』(バンダイビジュアル)(c)NIPPON ANIMATION CO., LTD.
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 1975年からフジテレビ系列にて、日曜日の19時30分に放映されていたテレビアニメ番組『世界名作劇場』。90年代中頃からは放送期間が短縮されたり、10年近く放送が途絶えたりを重ねながらも、26作もの「名作」を私たち視聴者へと届けてくれた魅力あるシリーズ番組だ。

 約1年ごとに“新しい物語”を放送していた本番組は、子どもたちにとって気軽に名作と触れ合える楽しみな時間でもあった。登場する子どもたちの冒険にハラハラしたり、身勝手な相手にはムっとさせられたり、悲しい別れで涙を流すなど、幼いながらも物語の展開に一喜一憂したものである。

 なかでも、主人公が理不尽な目に遭い、傷つき、心折れた姿を目の当たりにした時は、なんとも言えない歯がゆさを感じたものだ。とくに自分と大差ない年頃の主人公が大人や周囲に痛めつけられている姿は、つら過ぎて目を覆ってしまうこともしばしば。非道を尽くす「悪役」のせいで、視聴を一時中断してしまうほど幼心に怒りを覚えたものである。

 そこで今回、SNSが発達した今なら間違いなく炎上必至(!?)であろう、ゲスすぎる行動に本気で苛立った『世界名作劇場』の悪役たちと、その悪辣さを紹介したいと思う。

 

※本記事には各作品の内容を含みます

 

■貧しくも心優しい少年を追い詰めた非道な大人たち…『フランダースの犬』

 1975年より放送された『フランダースの犬』は、イギリス人作家・ウイーダの同名小説が原作で、画家を夢見る少年・ネロと労働犬・パトラッシュの友情が描かれている。

 ネロの友人であるアロアの民族衣装や風車から舞台がオランダと思われがちだが、「フランダース」はベルギー北部周辺を指す(※旧ベルギーはオランダ領)。

 そんな本作を視聴した筆者にとって印象的だったのが、大人の“悪意”だった。

 第3話にて、祖父と暮らす貧しいネロは道端に捨てられていたパトラッシュを拾う。2人の出会いとなる第1話では、街中で荷車を無理やり引かされ、金物屋にムチで叩かれるパトラッシュをネロが目撃する。暴言とムチを平気で使う金物屋は恐ろしい大人として子どもの目には映り、パトラッシュの悲鳴には胸が締め付けられた。

 第44話で祖父が亡くなると、いくつもの悲劇がネロを襲う。家賃が払えないネロは、大家であるハンスから出ていくように言われてしまう。さらに風車小屋の火事では、たまたま見かけたハンスが「ネロが放火した」と主張。大人たちから疑いを目を向けられ、牛乳運びの仕事まで失うことになってしまうのだ。

 追い打ちをかけるように、絵のコンクールにも落選。無一文となったネロは絶望し、拾った金貨をコゼツの家に届け、一緒にパトラッシュも預けてしまう。

 金貨の持ち主・コゼツはアロアの父で大地主だが、娘を溺愛するあまり貧乏なネロを嫌い、つらく当たっていた人物だ。最終回となる第52話では金貨を届けたネロに感謝し、風車の火事が自分たちの過失だと知り深く悔いる。

 だが、時すでに遅し……。雪が降る寒い夜の教会で、裸足のネロはパトラッシュとともにルーベンスの絵に抱かれ亡くなってしまった。

 非道な大人たちに追い詰められた少年の悲劇が、今も私たちの心を揺さぶり続ける本作。もう少し早く大人たちが手を差し伸べていたら、ネロとパトラッシュの運命は大きく変わっていたのでは? と、なんともやるせない気持ちになってしまう。

■いじめっ子たちや金にがめつい先生、そして作中随一の悪役令嬢?『小公女セーラ』

 次に紹介する『小公女(プリンセス)セーラ』は、1985年より全46話が放送されたシリーズ第11作目。フランシス・ホジソン・バーネット夫人の『小公女』を原作とし、昭和の少女漫画らしい展開が今も少女たちに愛され続ける物語だ。

 母を亡くした10歳のセーラは、インドでダイヤモンド発掘事業を手がける父親のおかげで裕福な生活を送っていた。ミンチン女子学院に入学した際も特別寄宿生として良い待遇を受けるが、院長のミンチン先生と同級生・ラビニアはそんなセーラを快く思わなかった。

 幼い頃に貧困を経験したミンチンは金に執着し、支援目当てでセーラを優遇する。しかし、父親が病死し無一文になると、セーラを使用人として屋根裏部屋に追いやり、食事も満足に与えず過酷な労働を強いるのだ。

 一方、ラビニアはアメリカの石油王の娘で、プライドが高くわがまま。代表生徒の座や人気を奪われた恨みで、取り巻きを使いセーラを執拗にいじめる。

 その最たるものが、セーラを自分専用のメイドにしようとする第20話のエピソードだ。あまりのことに流石のミンチン先生も、セーラに“自分の気持ち次第でいい”と、拒否権を与えるほどであった。

 娘の傲慢さを知った父親に叩かれたラビニアだが、その後も改心するそぶりはまるでなし。それどころかいじめる理由を、“堪えた素振りを見せないから”と語るほど。

 最終回では、父親の友人のおかげで裕福になったセーラに対し、“あなたがダイヤモンドクイーンになった頃に自分はアメリカ大統領夫人になっていると思う”と豪語していた。

 廃校の危機にセーラから援助を受け改心したミンチン先生とは違い、最後まで謝罪や反省もないラビニアこそ、まさに「悪役令嬢」といえるだろう。

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