
『ドラゴンクエスト』シリーズ(スクウェア・エニックス)では、主人公たちが成長して強敵を打ち破るだけでなく、さまざまな人たちとの交流も魅力的である。
だが、ときに悲しいストーリーに出くわす場面もあり、心が締め付けられてしまうこともある。父や母の死、奴隷や石化といった悲惨なドラマが描かれる『ドラクエ5』、さまざまな愛憎劇が繰り広げられる『ドラクエ7』などは、まさに悲しいストーリーだらけだった。
中には、大人になってから改めてプレイすると、子どもの頃以上にやるせなさを感じたものがある。そこで今回は、筆者があまりの切なさにウルッときてしまったシーンを振り返ってみたい。
※本記事には作品の内容を含みます
■『ドラクエ4』娘からの手紙を握り締め… アッテムトの毒ガスで息絶えた父親
まずは『ドラゴンクエストIV 導かれしものたち』の第四章に登場するアッテムトの町だ。アッテムトには鉱山があり、その毒ガスの影響により町は滅びようとしていたので、到着した時点ですでに悲しい雰囲気が漂っていた。
アッテムトには毒の沼地があるのだが、そこにある1体の白骨は手紙を握り締めている。手紙の中は父に早く帰ってきてほしいという娘の思いが綴られており、弟も寂しがっていることが分かる。
おそらくこの男性は炭鉱夫として、厳しい仕事の合間、何度もこの手紙を読んでモチベーションを維持していたのではないだろうか。娘からの手紙を握り締め息絶えている姿からは、最後に一目でも子どもたちに会いたかっただろうと伝わってきて、親の立場で考えると切なすぎる。
ちなみに、ハバリアの町で先にこの男性の子どもたちに会うことができる。夜の宿屋にいるルナという女性が姉、ピピンが弟で、彼女たちと会話することができるのだ。実はルナはすでに父親が死んでいることを知っており、まだ幼いピピンにどうやって伝えるべきか悩んでいた。
そして、キングレオ城で宿敵バルザックを倒し、ハバリアからエンドール行きの船に乗ることで第四章はクリアとなるのだが、ここでもルナとピピンに遭遇。
ルナはピピンに父の死を打ち明けるのはもう少し後にしようと考えていた。苦しみや悲しみに耐えられるようになるまで、ということだが、かたわらでは父に会わず帰ろうとする姉に憤ってしまうピピンが……なんとも切ないものである。
■『ドラクエ5』妹の幸せを願い、奴隷から解放してくれた恩人ヨシュア
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』では、主人公が10年間も大神殿を造る奴隷として過酷な生活を続けており、プレイ当時はかなり衝撃だった。ここの兵士ヨシュアと妹のマリアの存在によって主人公と友人のヘンリーが奴隷から解放されている。
主人公たちが奴隷として働いていた建設中の神殿は、大教祖イブールのためのものであり、もともと教団の信者だったマリアはイブールの皿を割ってしまって奴隷にされてしまった。
心優しきマリアは教団の考えについていけず、あろうことか奴隷を取り締まる「ムチおとこ」の足に石を落とすという始末。そしてムチで痛めつけられているところを主人公とヘンリーが助けに入り、マリアの命は助かったのだが主人公たちは牢屋に入れられてしまう。
すると、ヨシュアがマリアを連れて牢屋を訪れ、身を潜ませるためのタルを用意し、水牢を使って主人公たちを逃がすと言ってくれる。神殿が完成すると奴隷たちは殺されるかもしれず、このままでは妹の命も危ないと感じ、ヨシュアは奴隷の中でも「生きた目」をしている主人公たちにマリアを託すのだった。
ここでマリアに話しかけるとうつむいてしまうのだが、おそらく妹を逃がしたことで兄が咎められることが予見できたのだろう。その後、みんながタルに入ると、ヨシュアは願いを込めて壁のスイッチを押す。するとタルは流れ始め、大神殿から離れた海辺の修道院までたどりつくのだ。
こうして解放された主人公たちは新たな人生を取り戻し、マリアは修道院で神に仕え、ヘンリーは故郷のラインハットへ戻る。そして最終的にヘンリーとマリアは結婚を経て子どもにも恵まれ、幸せな家庭を築く。
さて、青年時代後半では完成された大神殿に乗り込み、白骨遺体と対面するのだが、壁に落書きがあり、「マリア……。兄さんは もう だめだ……。せめて…… せめて おまえだけは しあわせに なってくれ……」と書いてある。
死を悟ったヨシュアが書き残したものであることは明白であり、かなりウルッときてしまった。その願い通り妹は幸せに過ごしているよ……そうヨシュアに伝えてあげたくなったものだ。