■血しぶきや返り血も描く…記憶に刻まれる暴力の凄惨さと虚しさ

 仮面ライダーは戦って怪人を倒す。ヒーローだから当たり前の話だが『クウガ』ではそのおこないを“暴力”と捉え、カッコよさだけでは終わらない凄惨な一面を克明に描いている。

 たとえば、クウガとグロンギの戦闘でしばしば出てくる出血シーンだ。グロンギの攻撃でクウガは血を流すし、逆にクウガがグロンギを血みどろにしたりする。

 激しい怒りに燃えたクウガが返り血を浴びながらグロンギを殴り続ける、衝撃の第35話「愛憎」を覚えている人も多いだろう。真っ赤な鮮血は見る人をぎょっとさせ、現実的な暴力がいかにおぞましいかを思い知らせる。

 極めつけは、ラスボスのン・ダグバ・ゼバとクウガが死闘をくり広げる第48話「空我」だろう。熾烈な戦いの末に変身が解除されるまで疲弊したクウガとダグバは、殴りあいで決着をつけようとする。

 クウガから人間の姿に戻った雄介は血まみれになりながら、そして泣きながら拳を振るうのだ。暴力を嫌悪する雄介の優しい人格と、それでも暴力でグロンギを倒すしかない悲しみが、ここまで本作を見てきた視聴者の胸を打つ。

 『クウガ』の戦闘描写には、暴力がもたらす凄惨な結果とやるせない虚しさが込められている。出血もいとわないリアル志向は、作品に込められた“暴力否定”の現れなのかもしれない。

 

 『クウガ』の主題歌『仮面ライダークウガ!』には、“伝説は塗り替えていくもの”といったフレーズが登場する。本作のこだわり抜かれたリアル志向は『クウガ』を名作たらしめ、『仮面ライダー』の歴史を大きく変える礎となった。

 言葉の通り『クウガ』は伝説となり、25年が経った今も語り継がれている名作なのである。

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