
『仮面ライダークウガ』は、2000年の放送開始から今年で25周年を迎える。約6年新作がなかった『仮面ライダー』シリーズ復活ののろしをあげ、いわゆる「平成仮面ライダー」シリーズの一番手となった偉大な作品だ。
『クウガ』が25年も愛され続ける理由はさまざまあるが、そのひとつに徹底したリアル志向があった。架空のヒーローが主役でありながら、ストーリーや戦闘描写は現実に深く根差す異質な作風に、インパクトを受けた人は数知れない。
この記事では『仮面ライダークウガ』25周年にあやかって、本作がこだわり抜いた「リアル志向」に迫っていく。
※本記事には作品の内容を含みます
■スタントはプロのトライアルレーサー! CGほぼゼロのバイクアクション
『クウガ』ならではの魅力としてよく挙げられるのが、迫力満点のバイクアクションだろう。
近年では道路交通法などの事情から、バイクシーンはCGを使うことも多いが、本作ではCGを極力使用せず、スタントを用いた本格的なバイクアクションで視聴者を魅了した。まさに、“仮面ライダー”の原点回帰と言えるかもしれない。
本作のバイクアクションを語るならば、怪人ゴ・バダー・バとのバイクバトルは外せない。
バイクを手足のように操るゴ・バダー・バとクウガは第33話「連携」で激突し、白熱したマッチレースを展開。激しい蛇行やド派手なウイリーで互いを威嚇したり、接触ギリギリまで近づいたりと、見ているこちらがハラハラする。
バイクの動きだけで苛烈な戦いを表現している点も含め、バイクアクションが代名詞といえる本作を象徴する名勝負だ。
そんな『クウガ』のバイクシーンはなぜ魅力的だったのか? その理由はスタントにあるだろう。当時、トライアル(障害物を飛び越えたりしながらゴールを目指すバイク競技)の選手だった成田匠さんをオートバイスタントに起用し、プロのバイクアクションを取り入れていたのだ。
CGに頼らず、クオリティにこだわりぬく。まさに「リアル志向」である。
■伝説の「バックします」怪人グロンギの殺し方が現実味あり
本作のリアル志向はバイクシーンにとどまらない。とくに、怪人グロンギが一般人を襲うシーンは「トラウマレベル」と評されることが多い。
グロンギは、「ゲゲル」という彼ら独自のゲームに基づいたルールで一般人を虐殺するのだが、その殺し方が残酷極まりなく、なにより実際にあり得そうな描写ばかりだったのだ。
たとえば、第15話「装甲」に登場した怪人メ・ギャリド・ギは、トラックで人間を轢殺する手法でゲゲルをおこなう。
袋小路に追い込んだ人々を苦しめるように、トラックをゆっくりと後退させていくシーンは、被害者の様子を否が応でも想像させられた。「バックします」という機械的なアナウンスは、現実でもよく聞く音声であり現実味があるのもキツい……。
また、子どもが実際によく行く場所が殺害現場になったエピソードも多い。第25話「彷徨」では、タクシーやエレベーターを使う人間を狙う怪人ゴ・ザザル・バが登場しているし、夏真っ盛りの8月に放送された第27話「波紋」では、怪人ゴ・ベミウ・ギが市民プールで大虐殺を敢行した。
グロンギの暴挙が作中のニュース番組で取り上げられ、具体的な死者数が報道される演出も、リアルすぎて怖かったものだ。
現実でもありそうなシチュエーションで「ゲゲル」を遂行するグロンギは、視聴者をも震え上がらせた。子どもの頃に本作を見て「もしグロンギが出たら……」と、外出が怖くなってしまった人もいるのではないだろうか。