名作ドラマ『やまとなでしこ』「何回見てもグッとくる…」中原欧介が桜子の心を溶かした“涙腺崩壊”名場面の画像
松嶋菜々子  写真/ふたまん+編集部

 2000年10月クールにフジテレビ系の月9枠として放送されていたラブコメドラマ『やまとなでしこ』。2020年に再編集版がテレビで放送されたものの、長らく“再放送がされないドラマ”となっていた本作だが、2025年2月14日にNetflixで全話配信が始まり、ファンの間から歓喜の声が上がっている。

 同作は、お金持ちとの結婚が幸せだと信じてやまない客室乗務員の美女・神野桜子(松嶋菜々子さん)と、彼女に恋をした貧乏だけど優しい鮮魚店店主・中原欧介(堤真一さん)による恋愛を描くドラマ。

 価値観の違う二人に起こる心情の変化、物語が進むにつれ深まっていく恋の行方に視聴者は釘付けになり、平均視聴率26%、瞬間最高視聴率34.2%を記録した2000年代を代表する大ヒット作となった。

 同作の魅力はさまざまだが、特に視聴者の心をつかんだのは、思い描いていた理想とは違った相手ながらも、恋を育む中で価値観が変化していく様子を描いた点だろう。「私がこの世で嫌いなもの、それは貧乏」と言い切る桜子の心が、欧介と出会ったことで心を揺さぶられていく姿は、涙なくして見られない名シーンばかりだった。

※本記事は作品の核心部分の内容を含んでいます。

■大切なことに気づかせてくれた運命のカメレオン

 『やまとなでしこ』は、名シーンの宝庫と言っても過言ではないほどドラマ性のある作品だった。たとえば第2話、初デート中に忍び込んだ夜の公園でのびしょ濡れのキスシーンなどは、今でも鮮明に思い出せるという人が多いはず。

 このとき欧介は、貧乏だとバレたことで桜子にこっぴどく振られてしまう。桜子は、欧介の気持ちも知らんぷりで大病院の御曹司・東十条司(東幹久さん)と婚約しつつ、裏では合コン三昧だ。酷いとは思いつつも、恋愛持論が強すぎる見事なキャラのためか、不思議と許せてしまう。

 そして3話では、恋に奥手な欧介が見せた可愛らしい愛情表現によって、そんな桜子から本来の純粋な一面が引き出される瞬間が訪れる。

 失恋から間もなく欧介は、配達先の高級レストランで桜子の婚約パーティに出くわし、流れで参加することに。そしてその中で、桜子が「カメレオン」が欲しいと言っているのを聞く。これはロレックスの時計のことなのだが、欧介には分からない。

 その夜、またしても二人は偶然出くわし、言い争いの末、決別したところで桜子が過労で倒れてしまう。欧介は彼女を病院に連れていって親友の佐久間(西村まさ彦さん)の家に戻るが、彼の妻・真理子(森口瑤子さん)にハッパをかけられて再び桜子の元へと向かう。

 そして、眠る桜子の枕元に道すがらに見つけたブリキのカメレオンを置くと、王子様の夢を見る桜子の手を握り一晩中見守った。翌朝、欧介が姿を消すと、目覚めた桜子はブリキのカメレオンを見つけ、驚きながらもこぼれるような笑顔を見せるのだった。

 後にホテルから欧介と若葉が出てくるところを見て、「私がほしかったのは時計のカメレオンです。あんなおもちゃ私が欲しがるわけないじゃないですか」と罵るが、それでも大切にし続けた桜子。欧介の純粋な優しさが、彼女の心を溶かし始めたのだ。

■子どもの頃から夢見る王子様と同じセリフが欧介の口から…

 9話では、桜子の人生をかけた決意と父親との別れ、そして、欧介が桜子の弱さや辛さを包み込む名シーンが描かれた。

 あるとき、東十条家との顔合わせのために富山で漁師をしている父(小野武彦さん)が上京した。9年ぶりの再会にも関わらず、桜子は嫌がる父にマニュアルまで用意し、上品な父を演じてもらおうとする。それを見た欧介は、親に暴言を吐く桜子に怒り、つい彼女に手をあげてしまう。

 顔合わせ当日、スーツをビシッと決めた父が現れる。あれだけ嫌がっていたのに、愛する娘のために頑張って勉強したのかと思うと胸が締め付けられてしまう。

 なんとか顔合わせを乗り切り高速バスで帰路につく父は、バス停に現れた桜子に、「心配すんな。もう父ちゃんノコノコお前の前に顔出したりしないから! 父ちゃんのことなんか忘れてあの大金持ちと幸せになれ」と笑顔を見せる。そして別れ際、もう二度と会うことがないかもしれない娘に涙をこらえて「辛かったらいつでも戻ってこい」とエールを送ると、桜子も「父ちゃんごめん、嘘つかせてごめん」と素直な想いを伝えるのだった。 

 父が去った後、桜子は「これで良かったのよ。もう後戻りできない」と自分に言い聞かせるように語る。貧乏から抜け出すためにここまで振り切った、彼女の人生をかけた決意だ。

 桜子から寂しさや心の痛みを感じとった欧介は、「きっとあなたの辛いこと、全部忘れられる日がくるから、必ずくるから」と、彼女が待ち望んでいた夢の中の王子様と同じセリフを口にする。桜子は「王子様はあなたじゃない」と言いながらも、溢れ出る涙を抑えるように欧介の胸にもたれかかるのだった。

 誰にも弱みを見せない桜子が唯一本当の姿を引き出した相手、それが欧介なのだ。

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