■後味の悪さも魅力? 人間の醜さも描かれた第2期『ゲゲゲの鬼太郎』

 水木しげるさんが妖怪たちの活躍を描いた『ゲゲゲの鬼太郎』(1965年より連載)は、少年雑誌を中心に連載され、貸本時代には『墓場の鬼太郎』(1960年に出版)のタイトルで描かれている。

 アニメは第6期まで制作された人気作だが、昭和版のアニメの第1期と第2期は、鬼太郎の声を野沢雅子さんが演じている。

 本作が最初にアニメ放映されたのは、各家庭にテレビが置かれるようになった1968年(昭和43年)から。当時アニメも「カラー」が定着しはじめた時期でありながら、原作の雰囲気を再現するため、あえて「白黒」で製作されている。筆者もなんとなく記憶に残っているが、墓場のシーンがとにかく恐ろしく、モノクロ映像を脳内で補完することで余計に怖さが増す気がした。

 1971年(昭和46年)から初の「カラー作品」として第2期が放映されたが、前作に比べてホラー要素が強くなっている。鬼太郎とは関係ない水木さんの短編漫画『足跡の怪』を原作にした第43話は、怪異の恐怖とともに人の強欲さが描かれた『鬼太郎』アニメ屈指のトラウマ回だ。第35話「イースター島奇談」とともに、平成版アニメの第5期と第6期でリメイクされるほどの名エピソードである。

 ちなみに筆者は子どものころ、飼い主の娘のために嫌われながらも命がけで守った猫の話「猫又」(第7話)で号泣した記憶がある。猫の思いを知った飼い主が後悔するも時すでに遅く……猫娘が人間に対する憤りを叫ぶシーンが印象的だった。

 このように、第2期は価値観の違いや生きづらさ、環境破壊などが裏のテーマとして描かれ、「恐ろしいのは妖怪ではなく、実は人間なのでは?」と思わされる、後味の悪い秀逸なエピソードも多数存在した。

■幻の日テレ版を知っているか……国民的アニメ『ドラえもん』

 1969年(昭和44年)より小学館の学習雑誌などに掲載されたのが、藤子・F・不二雄さんの『ドラえもん』。もちろん現在も大人気で、半世紀以上も人々に愛され続けている国民的作品だ。

 昭和版といえば1979年(昭和54年)から約26年間テレビ朝日系列で放送された、大山のぶ代さんが「ドラえもん」の声を務めた「大山版ドラえもん」が有名だ。2005年からはメインキャストが刷新され、ドラえもん役は水田わさびさんにバトンタッチ。当時14歳だった木村昴さんがジャイアン役に抜擢されて話題となった。

 ところで昭和版アニメには、もう1作品『ドラえもん』があるのをご存じだろうか。それが、1973年(昭和48年)に日本テレビ系列で放映された、最初のテレビアニメ「日テレ版ドラえもん」だ。

 今と同じく15分2話構成で、約半年(2クール)の短命で終わっている。原作漫画の初期を彷彿とさせるブラック風味が強めな作風で、ドラえもんは今のようなのび太を諭す「保護者」のような存在ではなく、ドジなヤンチャ者として描かれていた。

 シリーズ前半のドラえもんの声は、「バカボンのパパ役」で知られる富田耕生さんが担当し、放映途中(14話から)に野沢雅子さんへと交代している。序盤はおじさん風の声だったのが、野沢さんに変わって子どもっぽく、親近感を覚えるキャラに変貌した。

 また、同じ日テレ系のアニメ『新オバケのQ太郎』(1971年放映)とは放送時期が近く、太田淑子さんや肝付兼太さんが両番組にメインで出演していたため、“ポンコツ気味”な日テレ版ドラえもんにはQ太郎のような愛嬌があった。

 さらに主題歌も印象深い。どこか気の抜けたイントロからはじまり、当時流行した「指パッチン」が取り入れられ、演歌のような独特の曲調がクセになる。

 現在の『ドラえもん』とは異なる独特の魅力があった日テレ版ドラえもんだが、裏番組に『マジンガーZ』などの人気番組の存在があったり、放送中にアニメ制作の内部で騒動があったりと、さまざまな面において不遇だった作品だ。とはいえ、個人的には今も最終回「さよならドラえもんの巻」は名作だと思っている。


 昭和時代のアニメ現場は、CGはおろかパソコンも使われていなかった。原作漫画の魅力を視聴者に伝えるため、当時のアニメ制作陣は手作業で相当な苦労を重ねて製作されていたはず。そんな昭和アニメが礎にあるからこそ、後に作られた作品のクオリティが向上していったのだろう。

 新しいリメイク(リブート)作品が登場する際は、事前に原点となる「リメイク前」のアニメも視聴しておくと、新作がより一層楽しめるかもしれない。

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