宝塚の公演で『ベルばら』に出会った

――そもそも黒木さんが最初に『ベルばら』と出会ったのは、宝塚の公演だったとか。

黒木 高校1年生のときに福岡に来た全国ツアー公演で見ました。それが宝塚を見た最初でもあります。『ベルばら』が「宝塚に向いているからやったらどうか」とどこからお話があり、植田紳爾先生(※)が「じゃあ、読んでみようか」と言って始まったと伺っています。

※植田紳爾氏は宝塚歌劇団の特別顧問で、1996年から2004年まで同団の理事を務めた。1974年、演出担当の長谷川一夫の指名で宝塚グランドロマン『ベルサイユのばら』の脚本を書き上げた。

――宝塚の『ベルばら』を見て、どんなところに惹かれましたか?

黒木 宝塚の上演ですので、本当にきらびやかでしたし、そこに人々の苦悩であるとか、フランス革命にまつわる様々な出来事があり、また実らない恋や実った恋があるなど、本当にすごい作品を原作の池田理代子先生がお描きになったなと。そしてよくぞ宝塚で上演なさったと思います。

――原作が連載されたのは1972年から73年。50年以上前です。しかし男装の麗人オスカルを通じて、女性の権利を伝えるなど、当時の作品としては珍しい価値観も含まれています。池田先生はそうした社会的なメッセージを「意識したわけではなく、結果としてそういう風に受け止められている」ともお話されていますが、黒木さんはどうお考えになりますか?

黒木 そうですね。最初に『ベルばら』と出会ったときには、ただ羨望の目で見ていました。そういったお話を伺ったり記事で拝見したりすると、私も「なるほど、時代の先取りをしていた作品だったんだな」と思いますし、それが長く愛されている理由のひとつでもあるのだろうと思います。ただ、『ベルばら』は“なんでもいい”んです。

――なんでもいい、とは。

黒木 理屈なしに見ても、作品として素晴らしいんです。哲学的、政治的、ジェンダー論的に語ることももちろんできますし、当然、池田先生の思いもあると思います。でもそういったことを全て考えずとも「ただただ素晴らしい」と思える作品です。なのでそうしたご意見に「そうですね」とは思いますが、私は作品全体の素晴らしさを“感じる”までです。

(C)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

劇場アニメ『ベルサイユのばら』
1月31日(金)全国ロードショー
原作:池田理代子

監督:吉村 愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡 真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野 綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹ほか

ナレーション:黒木 瞳

主題歌:絢香『Versailles - ベルサイユ - 』

(c)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会

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