■命を賭けて愛する孫と戦ったチヨ

 岸本斉史氏の漫画『NARUTO-ナルト-』で見事な最期が描かれた老婆といえば、くノ一・チヨだ。彼女は砂隠れの里で隠居生活を送る老婆だが、最大10体の傀儡を同時に操る極めて高い戦闘力の持ち主で、かつては傀儡師として名を馳せていた。

 弟のエビゾウと静かに隠居生活を送るチヨが、今生で唯一心残りにしていた人物が孫のサソリだ。チヨはサソリを幼少期から殺された両親に代わり傀儡を教えながら育てていたが、抜け忍となり知らぬ間に犯罪組織・暁に入ってしまったのだ。“我愛羅救出作戦”では、そんな二人が悲劇的な再会を果たすことになる。

 暁のアジトで木ノ葉第七班とチヨが見たのは、息絶えた我愛羅とサソリを含む暁のメンバー。激怒したナルトはデイダラを追い、残ったチヨとサクラはサソリと対峙する。

 磨き上げたサソリの傀儡・ヒルコを前に、チヨは自身の糸でサクラを操って叩き壊す作戦を提案。思惑通りヒルコが粉砕されると、人傀儡によって15歳の姿のままのサソリが現れた。

 だが感動の再会になるわけもなく、サソリは殺害した三代目風影の人傀儡を繰り出し、チヨはサソリが初めて作った両親の傀儡を出して応戦した。複雑な想いでサソリを見つめるチヨの姿がなんとも切ない。

 サクラとともに何とか三代目風影を撃破しサソリとの戦闘に突入すると、チヨの白秘技・十機近松の集VSサソリの赤秘技・百機の操演が炸裂。チヨをかばったサクラが刺されるも、両親の傀儡がサソリの生身の核を刺し、辛くも勝利を飾った。チヨへのトドメに一瞬戸惑ったうえに、傀儡とはいえ両親に刺されてしまうサソリもまた切ない。

 サソリ撃破後、チヨは我愛羅に転生忍術「己生転生」を施した。これは両親の傀儡と幸せそうに過ごす幼いサソリを見たチヨが彼のために生み出した術で、自身の命と引き換えに死者や傀儡に命を宿せる禁術。愛する孫のために命を賭けた術を生み出し、自らの手で彼を葬ったチヨは、最後にナルトを通じて忍の世界に希望を見出し、美しく人生の幕を下したのである。

 どの老婆も、みな戦闘力のみならず精神力も高く、人としての魅力にあふれている。長い人生の中で多くの悲劇や試練を乗り越えてきたからこそ、この深みが出せるのであろう。人のために生き、人のために死んでいった彼女たちは間違いなく最高にかっこいい。

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