『鋼の錬金術師』ヒューズに『シティーハンター』槇村秀幸も…序盤に死んだのに「その後の存在感」がハンパなかった人気キャラたちの画像
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 漫画やアニメには、最序盤で死亡したにもかかわらず忘れられないキャラがいる。『【推しの子】』(原作:赤坂アカ氏、作画:横槍メンゴ氏)の星野アイや『葬送のフリーレン』(原作:山田鐘人氏、作画:アベツカサ氏)のヒンメルはその典型だろう。

 彼らはその生きざまで主人公に強い影響を残し、その後のストーリーで大きな存在感を発揮する。存在しないのに誰よりもキャラが立っている……ある種の矛盾を成立させている。

 そこで今回は、序盤で死んだのに存在感を残し続けたキャラたちを見ていこう。

■早く真実に気づきすぎた…『鋼の錬金術師』ヒューズ

 漫画史に残る大ヒットダークファンタジー『鋼の錬金術師』(荒川弘氏)に登場するアメストリス軍中佐、マース・ヒューズの突然の死は多くのキャラの“その後”を変えた出来事だろう。

 おちゃらけているが家族思いで気のいいヒューズはハードな展開が続く『ハガレン』における清涼剤のような存在だったが、その死はあまりにも早く、あっけなかった。

 ヒューズはとあるきっかけから本作の核心ともいえる黒幕の計画に気づいてしまう。そのせいでホムンクルスの抹殺対象となってしまい、最後は愛する妻に変身したホムンクルス・エンヴィーの凶弾に倒れる。

 これが、原作第15話での出来事だ。全108話ある本作から見ればかなりの序盤であり、その段階で黒幕の狙いを悟ったヒューズの頭脳には拍手を送りたい。その優秀さが死因となったのだが……。

 ヒューズの死が残した影響は「黒幕の狙いが闇に葬られた」だけではない。家族を大事に思っていた彼が愛する人々を遺してしまった哀しみは、主人公のエルリック兄弟や親友のロイ・マスタング大佐の心に影を落とした。

 とくにマスタングは、ヒューズを殺害したエンヴィーとのちに対峙した際、復讐のため心を鬼にしようとしたほど。ヒューズの死はあっけなく見えたとしても、遺された人々にはこの上なく重かった。

■獠が香に素直になれない最大の理由か?『シティーハンター』槇村秀幸

 次は、新宿の裏社会を舞台にした『シティーハンター』(北条司氏)から、主人公・冴羽獠の日本での最初のパートナー、槇村秀幸を見ていこう。彼の妹である槇村香と獠のコンビこそが本作の顔なわけだが、彼らが組むきっかけこそが槇村の早すぎる死であった。

 原作漫画第6話「恐怖のエンジェルダストの巻」において、槇村は麻薬カルテルの依頼を断り、その報復によって致命傷を負う。瀕死の体でなんとか獠のもとにたどり着いた槇村は「香を……頼む——」と言い残し、パートナーである獠の腕のなかで命を落とす。

 唯一の身寄りであった槇村を失った香が半ば押しかけ気味に獠の相棒を受け継ぎ、のちの名コンビが生まれるわけだ。槇村が死ななければ獠と香のコンビになっていなかったと思うと、まさに『シティーハンター』の転換点である。

 ところが槇村の死は、獠と香の恋愛事情をややこしくする役目も果たしてしまった。槇村の“香を頼む”という遺言を受け止めた獠は、香を守り抜く決意を固める。その決意には、香を異性として見ない自責の念も含まれているのだ。

 美女にめっぽう弱い“モッコリ野郎”な獠だが、香については「親友の妹に手はださん」「香は仕事のパートナー」と断言している。しかし、本心では香を女性として心から愛しているのだからタチが悪い。

 一方で香も自分を守ってくれる獠に恋心を抱いているが、自分を女として見ない態度にヤキモキし続ける。新宿の裏社会に名を馳せるシティーハンターが、まるでラブコメ漫画のような両片想いをしているのだから読者としてはもどかしくて仕方がない。

 だが、そんな素直になれない2人も『シティーハンター』の魅力だ。その発端となったのが槇村なのだから、彼の影響力は計り知れないと言えるだろう。

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