昭和から平成にかけてのNHK教育テレビは、子どもたちにとって欠かせない存在だった。学校を休んだ日や夏休みなどの長期休み中、教育テレビを見ながら過ごしたという経験を持つ人も多いだろう。
とくに工作や社会科見学をテーマにした番組の影響力は大きく、番組を見た子どもたちは「自分もやってみたい!」とチャレンジ精神を刺激されたものだ。今回は、そんな教育テレビのなかでも、多くの子どもたちが夢中になって真似した思い出深い番組を振り返ってみよう。
■一緒に工作したくて胸が高鳴った『できるかな』
まずは、“元祖造形教育番組”とも言える有名作品を紹介したい。それが、1970年4月8日から1990年3月6日まで、20年間にわたって放送された『できるかな』である。
本番組は主人公のノッポさん(高見映さん)が身近な素材を使っていろいろな玩具を作り、人形のゴン太くんと一緒に遊ぶという内容だ。新聞紙やトイレットペーパーの芯、紙コップなど身近な物を使って魅力的な工作を次々と作っていたのが印象的だ。
そして、ノッポさんがいっさい喋らないのも本番組の特徴だった。ノッポさんはチャーリー・チャップリンの大ファンだったというが、それが少なからず反映されていたのかもしれない。ノッポさんがコミカルな動きをしながら作った工作の数々で遊ぶ様子は、見ているだけでもワクワクさせられた。
筆者も子どものころに『できるかな』を見ていた世代だが、自分も一緒に作りたくて胸が高鳴ったことを覚えている。
たとえばトイレットペーパーの芯を使ってロケットを作るといった回では、自分も早く作ってみたくて、トイレに行くたびに普段よりペーパーをじゃんじゃん使ってみたり、また色画用紙を使う回を見たときは、母に「早く買って!」とねだり、色画用紙を買ってもらった記憶もある。
現在のようにスマホがない時代、何かを作って遊ぶのは子どもの大きな楽しみであった。そんな当時、子どもたちの創作意欲を大いに掻き立ててくれた本番組の存在はとても貴重であったと思う。
■昭和から平成へ子どもの工作意欲を引き継いだ『つくってあそぼ』
『つくってあそぼ』は、1995年から放送された造形教育番組だ。もともとは『できるかな』の後継番組として『ともだちいっぱい』シリーズが始まり、95年からこの『つくってあそぼ』というタイトルになった。
本番組は久保田雅人さん演じるワクワクさんと、クマのゴロリがユニークな工作を作って遊ぶ内容だ。『できるかな』のノッポさんとゴン太くんは喋らない設定だったが、『つくってあそぼ』は2人が楽しく会話をしながら工作をしていくため、作り方がより分かりやすくなっていた気がする。
また、昭和のときよりさらに工夫され、凝った工作が登場していたのも印象的だ。たとえば、紙で動物のお面を作る場合も耳が飛び出たり鼻が伸びたりする仕掛けが施されているなど、チャレンジ精神を刺激される工作も多かった。
『つくってあそぼ』は2013年3月をもって放送終了し、23年もの長い歴史を作った。筆者の子どもが幼い頃にお世話になった番組で、自分が幼い頃と同様に「封筒用意して!」「ストローがほしい!」と、ねだられたものである。世代を超えて愛された番組だった。