■“子どものための料理番組”という新たなジャンルを開拓した『ひとりでできるもん!』
『ひとりでできるもん!』は、1991年にはじまった子どものためのお料理番組である。料理の工程を紹介するだけでなく、主役の子どもが一人でお使いに行ったり、家事をこなしたりする様子が話題となり、教育番組では異例の視聴率10%台を達成した。
本番組は主役交代を重ね、2006年まで放送された人気番組だ。初代主役の舞ちゃんを演じたのは平田実音さん。その後『新・ひとりでできるもん!』となって、舞ちゃんの弟・文ちゃん(松村泰一郎さん)が登場したり、男女ペアの2人が主役になるなど新しい展開が続く。
1998年には初代主役の舞ちゃんが高校生になり、番組に講師役の舞おねえちゃんとして戻ってきたのも話題となった。
『ひとりでできるもん!』は単なる子ども向け番組にとどまらず、食育の面でも大きな貢献を果たした。放送当時の社会は“子どもに包丁を持たせるのは危険”という考えが根強くあったが、この番組はその意識を大きく変えた。
幼い頃から料理を学ぶことの重要性を説き、子どもたちが自信を持ってキッチンに立てるようになるきっかけを提供した革新的な番組であったと言えるだろう。
現在、NHK教育テレビは『Eテレ』という名前で親しまれ、子どもたちに寄り添い続けている。しかしインターネットの普及に伴い、昭和から平成にかけて見られたような絶大な影響力は、少し薄れてしまったように感じられる。
その変化に一抹の寂しさを覚えるのは否めない。だが、これからも子どもたちの好奇心や意欲を掻き立てる魅力的な番組が生まれることを期待したい。