■3人のテンポ良い掛け合いも見ものだった『29歳のクリスマス』
1994年に放送された『29歳のクリスマス』も、山口さんの代表作のひとつだ。90年代はまだ、女性は20代のうちに結婚をし家庭に入るのが良いといった風潮があった。そのためドラマのタイトルのイメージだけを見ると、それができない女性の焦りを描いた内容のように思える。
しかし本ドラマは、結婚や仕事に揺れる3人の男女の友情と恋愛模様を描いたストーリーで、今見ても共感できることが多い。
山口さんが演じたのは、アパレル会社で働く主人公・矢吹典子。典子はバリバリのキャリアウーマンだが、恋愛では不器用なタイプだ。常に周囲の人々との関係に悩みながらも、自分らしい生き方を模索している。
また、松下由樹さん演じる親友・彩子、柳葉敏郎さん演じる男友達の賢も登場し、典子を交えたテンポの良い掛け合いが繰り広げられるのも面白く、さらに同居を通じて3人の絆が徐々に深まっていく様子は物語の大きな見どころであった。
クリスマスシーズンに放送されたドラマだが、ありきたりな男女の恋愛ドラマではなく、女性の生き方に一石を投じた作品であったように思う。
典子が言った「自分の人生は自分で切り開いて行く」というセリフは、時代を問わず、今でも多くの人に刺さる名言だろう。
■鬼気迫る復讐シーンに固唾をのんだ『もう誰も愛さない』
最後に、少し趣が異なる作品として、1991年に放送された『もう誰も愛さない』も紹介したい。本作は愛憎劇と復讐劇が絡み合うサスペンスドラマで、山口さんの迫力ある演技が楽しめる作品だ。
山口さんが演じたのは、裏切りと陰謀の中で復讐に燃えるヒロイン・田代美幸だ。美幸は吉田栄作さん演じる沢村卓也と、田中美奈子さん演じる宮本小百合の策略によりどん底の苦しみを味わい、復讐をすべく沢村たちを追い詰めていく。
このドラマでの山口さんはショートヘアで、沢村たちを睨みつける眼光が凄まじかった。山口さんはその後『ロングバケーション』で国民的美女のイメージを確立させていくが、本作を見ていた当時はまだ「山口さん=鬼気迫る女」といったイメージがあった。
複雑な人間関係と予想外の展開が次々と繰り広げられた本作は「ジェットコースタードラマ」とも言われ、人気を博した。見逃せない展開を作り出したのは、やはり山口さんの迫真の演技があったからこそだろう。
実力を持つシェフから国民から愛されるヒロイン、そして復讐に燃える女性などを演じてきた山口智子さん。こうして振り返ってみると、山口さんの演技力がいかに幅広いかが分かる。
山口さんは現在も多くのドラマなどに出演し、2025年1月3日には『監察医 朝顔2025新春スペシャル』に登場する。相変わらずチャーミングな笑顔と素晴らしい演技に注目したい。